「今日、部活でしょ? 俺終わるまで待ってるから一緒に帰ろ」

昨日の今日で、部活のため例の中野と一緒なのが気になるのだろう。
柊は朝一番に帰りの話をしてくる。

「いいけど、外はやめろよ。どっか寒くないとこにいろ」
「は〜い」

素直な良い返事に俺はほっとする。
下手したら体育館の前に何時間も居るやつなのだ。
もう冷えきった柊の手を握ることにはならないといいが。

部活後、俺を待っていた柊はにこっと笑い自慢げに言う。

「図書室が開いてたからちゃんとそこで待ってた。ほら、冷たくないでしょ?」
「…ん。それならいい」

頬に手を当ててきたので上から握り込み、ちゃんと暖かいことを確認する。
鼻の先は赤くなり始めているから、ホットドリンクでも買いながらさっさと帰ろう。

「よし。帰るか――」
「遥風先輩!」

そこで聞こえた元気の良い声に俺は足を止める。
振り返れば中野が小走りでやってきて、しっぽでも見えそうな勢いだ。

「僕も一緒にいいですか?」
「いいよ。みんなで帰ろ。ね、遥風」
「お、おう」

どういうわけか柊の方がすんなりと受け入れるから俺は首を傾げた。
何を企んでいるのかと怪訝に思っていたら、帰路についてからすぐに分かった。