途中で中野とは分かれた。
ふたりきりになった途端、それまで黙っていた柊が口を開く。
「さっきの子、遥風のこと好きなのかな」
「そんなこと、ないと思うけど… 昨日も、友達になってくれって言われただけだったし」
「それは知ってるけど。好きって言うと断られるからそう言ったんじゃないの?」
正直それも考えた。…けど、さすがにそれで距離を取るのは自意識過剰だろ。
ていうか、やっぱ昨日のことも知ってたんだ。どっから仕入れてんだ、その情報。
「中野も俺も男だし。普通に仲良い先輩後輩って感じで――」
「俺も男だよ?」
いつの間にか柊の家の前で、足を止めた柊が鋭く俺を見据えた。
何も言えないでいる俺をくいっと引っ張り、玄関を入ってすぐに壁に追い詰められる。
ぐっと顔が近づくので、俺は慌てて柊の口元に手の甲を押付け制する。
「ま、てって…家族の人は、?」
「今日はまだ誰も帰ってない」
だからいい、ってわけでもないんだけど…!
「んっ、」
キスだけなのに未だに慣れない自分の出す声に頬が熱くなる。
何度か交わして満足したのか、柊はぽすりと俺の肩に顔を埋めてしまった。