その日も俺は校舎裏に呼び出されていた。

学年は1つ下。同じバレー部の後輩。大きな目と栗色のくせっ毛が特徴の男に、だ。

「僕、先輩にすごく憧れているんです! バレー上手いし、頭も良くて優しくて素敵だなってずっと思ってました」

告白……じゃないのか?

俺は反応に困って口ごもる。すると彼はにかっと笑って言った。

「僕、中野って言います! 先輩、僕と友達になってもらえませんか!」

わざわざ呼び出して友達の申し込み…って、そんなことあるんだな……。
柊が聞いたらすごく嫌な顔をしそうだ。

とはいえ、告白されたわけでもないのに断るのは自意識過剰というか…実際、ほんとに友達になりたいのかもしれないし。俺は彼…中野のことをよく知らない。

「…うん。いいよ」
「やった! あの、遥風先輩って呼んでもいいですか」

きらきらと純粋な瞳で見つめられ、俺は頷く。

別に、いいよな。名前で呼ぶのって、友達の第1歩だろ。

……ただ、この後輩と柊は会わせられない。それだけは確かだ。