「あら、起きたの?」

保健医が埋まっているベッドの方へ行くと、ザッとカーテンが開いた。

「知ってる声が聞こえてさっき起きた。 もう1回寝ようと思ったのに、あまりに間抜けな話に耐えられなくて」

そう言ってベッドから顔を覗かせたのは、柊汐凪だった。

俺の考え事の原因。てか、間抜けって言ったな、こいつ。やっぱ俺がボールを避けられなかったのはこいつのせいにしてやる。

「柊、寝てたのか?」
「あ、バレた? よく寝た〜」

こいつ、サボって保健室で寝てたとか。まじでなんなんだ。

「もういいの? まだ辛いなら次の時間もベッド貸せるわよ」

保健医の言葉に俺は耳を疑った。

柊はサボりでここにいたんじゃなかったのか?

「大丈夫だよ、タエちゃんせんせー。ほんとにサボっただけだから」
「柊くんはこの前もそう言ってここへ来て、体温を測ったら高熱だったでしょう。あなたの言葉は先生信じません。 はい、体温測りなさい」

柊はいつものへらへらとした笑顔を浮かべながらもどこか焦っているように見えた。たぶん、俺がいるから。柊がサボりだと言って教室にいない時、本当はサボりではなかったと知られたくなかったのだろう。