翌日は5、6人で構成された班での行動がメインの一日だ。
俺たちは駒木さんと彼女の友達と同じ班。
俺と駒木さんが付き合っているんじゃないかという疑惑が収束したあと、彼女の恋の方も平穏を取り戻している。
駒木さんの好きな人、国語教師の高瀬先生から言われたそうだ。
『駒木さんの感想文からは、あなたらしく素直な感情が伝わってきて面白いです。勉強熱心な良い生徒を持って、私は嬉しいですよ』
全くもって健全で、進展なんてあったものじゃない雰囲気だが、駒木さんはそういう先生だから好きなのだと頬を赤らめて話してくれた。
そんな駒木さんは俺と柊の関係も知っているので、昨日までは誰にもバレなかった柊からの愛情表現を見透かされそうで俺は朝からヒヤヒヤしていた。
柊のやつ、しれっと手を繋いだりキスしてきたり、油断も隙もないんだよな……
というか、今日は柊だけではなくやけに……
「なぁ、なんか視線感じないか? 雨谷、なんかした?」
浅井の言葉に俺は同意する。
俺がやらかした設定なのは聞き捨てならないが。
「何もしてない、と思うけど。 見られてるのは柊じゃないか?」
心当たりはないので首を傾げていると、駒木さんが苦笑して小声で言う。
「あー…あのね、私たちが柊と雨谷くんと同じ班なのが羨ましいって、いろんな子から言われています」
俺はなんとも言えない気持ちで押し黙る。浅井は腕を組んでわざとらしく頷いてみせた。
「なるほど〜。つまり俺ら、嫉妬されてるわけだ!」
「特に雨谷くんは、ここ最近雰囲気が柔らかくなったから。クールな感じも良かったけど、今なら仲良くなれるんじゃ…という声が多数……」
駒木さんが語尾を濁して言いにくそうにするのは柊がいるからだろう。
俺もずっと柊からの視線が痛い。
仕方ないだろ。別にわざとやってるんじゃないし。てか、雰囲気変わったとかいうのは絶対柊のせいだし。
そもそも、モテれば良いってもんじゃないことを、俺は身に染みて体験済みなんだっての。
「俺の遥風に手出したら許さない」
はっきりと聞こえた独占欲丸出しの発言に俺はびくりと肩を震わせる。
「自分にだけ懐いてた猫が他のとこでも飯食うようになるのは、寂しいよな」
海堂がすらすらと絶妙な例えを放ち笑いが起こったが、俺は気が気でなかった。
嫉妬深い恋人が怒って、襲いかかってくるんじゃないかと。