藤村は正面から俺の目を見て、突然ガバッと頭を下げた。

「あの時のこと、ごめん。雨谷が転校してから、ミカちゃんに本当のことを聞いたんだ。彼女とは別れたよ。俺、雨谷に最低なことした。ずっと謝りたかった」

俺は驚いて、それから慌てて藤村を制した。

「顔上げろって。終わったことだろ。ただの噂だったって分かってもらえたなら、もういいから」
「…ミカちゃんも、雨谷が転校までするとは思わなかったって、」

あの時は傷ついたし、信じてもらえなかったこともショックだった。
友達もいらないと思うくらいには、ダメージ食らってたけど。

「転校したのは親の仕事の都合だって。彼女にも、そう言っておいて」
「うん、そうだよな。ごめん、ありがとう」

今は素直に良かったと思う。ずっと心に引っかかっていたものがするりと解けて、本当の意味で区切りがついたような。

藤村と再会しても逃げ出さず、彼と話そうと思えたのは柊のおかげだ。
無性に柊に会いたくなった。すぐそこに居ると分かっているのに、今すぐ彼の顔を見たいのだ。

「…じゃあ俺、戻るな」
「ああ。ほんとに、ありがとう。元気でな」
「藤村も。元気で」

今度こそ晴れ晴れとした気持ちで、俺は藤村と別れた。