しかし、俺の願いも虚しく運命とはなんと残酷なことか。

入口からしばらく歩いたところで、懐かしい顔を見つけてしまった。…もっとも、懐かしいなんて穏やかな心境ではいられないが。

どくんと鼓動が大きくなって、俺は堪えきれずぼそりと言った。

「……俺戻るわ」
「え、雨谷?」

浅井が振り返って驚いたような声を上げるのも無視して踵を返す。

「待って、遥風!」
「構うなよ。柊はみんなと行ってろ」

ついてきた柊に放った言葉は存外冷たく聞こえてしまう。

「俺、いつも頼れって言ってる。今の遥風、転校してきたばっかの頃と同じ顔してるから放っておけない」

スタスタと余裕で隣を歩く柊の迷いのない声色にハッとする。
歩幅を緩め、俺は小さく息を吐き出した。

さっき、柊がいれば大丈夫って思ったのに。余裕なさすぎてダサいな、俺。

「…前の学校のやつがいただけ。修学旅行、ちょうど時期が被ってたっぽいわ。会いたくないくらい引きずってるとか、ガキだよな」

自嘲気味に零す俺に、柊はドスの効いた声で言う。

「遥風を傷つけた人たちでしょ。そんなの、俺も会いたくないし」
「ふっ、おまえ、やっぱ俺より怒るのなんなの」
「決まってるじゃん。遥風のことが大切で、大好きだからだよ」

そういうもんなのか。っていうか、よく恥ずかしげもなくそんなことを……。