2日目は観光名所をいくつか周ることになっている。
朝食をとりホテルを出ると、まず日本最大級の広さを誇るテーマパークに向かった。名所なだけあって、平日でもそれなりに賑わっていた。修学旅行中の学生も見られる。
最初にうちの制服ではない学生を見た時、俺は内心どきりとした。
転校前に通っていた学校のものによく似ていたからだ。…いや、あれは絶対そう。
幸い顔を知っている生徒はまだ見かけていないが、いつ鉢合わせてもおかしくはないだろう。
帰りたい。顔を合わせたくはない。嫌な記憶が蘇って、楽しそうなクラスメイトの雰囲気とはかけ離れた心情が募る。
こんなに広いんだから、どうか出会ったりなんかしませんように。
「…遥風、具合悪い? 夜眠れなかった?」
祈りつつため息を漏らしたのを、横にいた柊に聞かれてしまった。たぶん、浮かない顔をしていたのもあるだろう。
「…ごめん。なんでもない」
「いいけど、何かあったら言ってね」
ああ、そうだ。
柊の困ったような控えめの微笑を見ると、彼がいれば大丈夫な気がしてくる。俺が落ち込んで空気を悪くしても怒ったりしないだろうし、前の学校の話をした時みたいに聞いてくれるのだろう。
「…ありがとう」
気持ちは少しだけ軽くなった。