「…なにそれ。 可愛すぎるだろ」
「は、…はぁ!?」
「遥風」
「な、んだよ、」
「俺のこと好きなの?」
「だ、から、そう言ったろっ、」
「もう一回。急すぎて頭追いつかないから、遥風の口から聞かせて」

嘘つけ。いつも揶揄ってくる時と同じ顔してるじゃねーか。どうせ、とっくに状況整理なんて終わってんだろ。
こういうとこ、ほんっっとムカつく!余裕な顔しやがって!

「好きっつってんだろ!」

そういう柊を好きになった俺も大概だ。
満足そうに満面の笑みを浮かべる柊を睨みつけるしかできないのが悔しい。

柊が好きで、こいつの喜ぶ顔を見てほっとしている自分が恨めしい。

「嬉しい。俺と、付き合ってくれますか」
「…ん」

好きとは言えたけど、今日はそれだけで許してほしい。
ぶっきらぼうな返事しかできない俺の頬を、柊はふわりとした優しい笑みとともに包んだ。

指先だけが冷えた、柊の感触。

それから唇に、一瞬の温もり。

「誰も見てないし、いいでしょ?」

いたずらっぽく笑う柊の表情。

秋の暮れに感じたその全てが、俺を彩り、甘く優しい恋情にそっと触れた。