あっという間に数日が過ぎた。教室で実行委員の仕事を進めていたら駒木さんに進展を聞かれる。具体的なことは避けて掻い摘んで話終えると、駒木さんは言うのだ。

「そっか〜。雨谷くんは自分の気持ちに鈍感みたいだから、柊にしては手こずってるんだね」
「な、え、な、んで…」
「実は前からなんとなくそうかなって思ってたよ。柊、私が雨谷くんといると面白くなさそうだし」

ふふ、とおかしそうに笑うから、俺は苦笑を浮かべる。それからハッとして顔が熱くなった。
今の話で俺が柊をどう思っているかも伝わったってことだ。

「柊のどんなとこが好きなの〜?」
「や、やっぱこれって、好きって、ことなのかな」
「好きって、私みたいにはっきりきっかけがあるばかりじゃないと思うよ。 雨谷くんの柊へ感じていることも、十分甘くて優しいじゃない」

あまく…やさしい……いやいやいや、!俺はまだそんなに純粋に考えられない!恋する乙女ってやつ?駒木さんの可愛さの源はそれか…?
俺は顔を覆い小さく呟く。

「…この話はもうやめよう。 駒木さん、話聞いてくれてありがとう」
「雨谷くん、顔が真っ赤だよ。はぁ。こんなにピュアな雨谷くんが柊に捕まっちゃったなんて……」

俺はますますいたたまれなくて小さくなった。

柊の件については一旦追いやることにして、その後は務めて他愛のない話を続けた。
駒木さんが教室の鍵を職員室へ返却に行ってくれるのを待っている間、ひとり考える。

柊と、話さなきゃだよな。

まずこの前のことを謝って…俺から告うってことか…?
ムリかも…告白なんてしたことない。いつ?どんなテンションで?いつもあいつから吹っかけてきてたから分からん。
いやでも、ここは誠実に向き合うべきだ。
もう中途半端な気持ちで柊を傷つけたくない。

ぐるぐると頭を悩ませていたら、駒木さんが出てきた。
声を掛けようとして、様子がおかしいことに気づく。俯いたまま歩いてきて泣きそうな顔を見せるのだ。

「駒木さん…? 何かあった…」
「どうしよう、雨谷くん…私、先生に迷惑かけてたかも、」

今にも泣き出しそうな表情に俺は焦って駒木さんの手を掴む。

「とりあえず、場所変えよう」

人目に付くところでは話しにくいのだろうと思ったのだ。
俺は彼女の手を引いて、近くの公園のベンチを思い起こした。

そしてこの時の俺の行動が、あらぬ誤解を生むことになるのだった。