その日の五限は体育だった。毎度の如く、着替えてグラウンドに出た頃には柊はいない。
柊がいなくても、柊と一緒にいることの多い浅井と海堂は自然と近くにいた。浅井に誘われてバレーボール部にも入った。この学校は部活動は強制ではないが、運動部にでも入らなければどうにも体が訛りそうだったから。小中とバレーをやってきたし、前の高校でもクラブで緩く活動していた経験がある。
「今日50メートル測るってさ。 雨谷って足速そうだよな!」
「普通だよ。 速くは無い。柊のが速そうじゃん。いつも体育はいないけど」
「あー、柊は足速いよ。トップなんじゃねーか? な、海堂」
「だろうな。1年の頃一度走っているのを見たことがあるが、陸上部の俺より速くて軽くショックだったな」
海堂がしかめっ面で答える。ふーん。あいつ、運動神経までいいんじゃねぇかよ。そのくせ体育はサボりとか、勿体ぶってんのか?いけ好かないやつ。
柊への不信感は募る。授業でサッカーが始まっても、柊が体育に出ない理由がなんとなく気になっていた。そのせいだろう。
サッカー部が思い切り蹴ったボールがこちらに向かってくるのを避けられなかった。気づいた時には顔面に直撃。
いやいやいや、ダサすぎるだろ、これは…!最悪。もはやこれも柊のせいじゃねぇか。あいつの生態が知れないから気になって仕方なくて…それが人間の性ってもんだろ!
「大丈夫か雨谷ーー!」
体育教師の熱の篭った叫び声がグラウンドに響く。やめてくれ。頼むからそんなに騒がないでくれ。不注意でボールを食らっただけだから。そう、分かっている。これは俺が悪い。
「大丈夫で――」
「念の為保健室に行け!」
「え、いや、大丈夫――」
「誰か! 雨谷についてやってくれないか!」
ダメだ、この教師。熱血にも程があるだろ。話を聞けっての。男子高校生がサッカーボールにぶつかったくらいで大袈裟なんだよ。
「ひとりで行きます!」
それなりに大きな声を出した。体育教師は納得したようで俺を送り出す。背中ではボールを蹴ったサッカー部のやつが、両手を合わせて謝罪の言葉を叫んでいた。
柊がいなくても、柊と一緒にいることの多い浅井と海堂は自然と近くにいた。浅井に誘われてバレーボール部にも入った。この学校は部活動は強制ではないが、運動部にでも入らなければどうにも体が訛りそうだったから。小中とバレーをやってきたし、前の高校でもクラブで緩く活動していた経験がある。
「今日50メートル測るってさ。 雨谷って足速そうだよな!」
「普通だよ。 速くは無い。柊のが速そうじゃん。いつも体育はいないけど」
「あー、柊は足速いよ。トップなんじゃねーか? な、海堂」
「だろうな。1年の頃一度走っているのを見たことがあるが、陸上部の俺より速くて軽くショックだったな」
海堂がしかめっ面で答える。ふーん。あいつ、運動神経までいいんじゃねぇかよ。そのくせ体育はサボりとか、勿体ぶってんのか?いけ好かないやつ。
柊への不信感は募る。授業でサッカーが始まっても、柊が体育に出ない理由がなんとなく気になっていた。そのせいだろう。
サッカー部が思い切り蹴ったボールがこちらに向かってくるのを避けられなかった。気づいた時には顔面に直撃。
いやいやいや、ダサすぎるだろ、これは…!最悪。もはやこれも柊のせいじゃねぇか。あいつの生態が知れないから気になって仕方なくて…それが人間の性ってもんだろ!
「大丈夫か雨谷ーー!」
体育教師の熱の篭った叫び声がグラウンドに響く。やめてくれ。頼むからそんなに騒がないでくれ。不注意でボールを食らっただけだから。そう、分かっている。これは俺が悪い。
「大丈夫で――」
「念の為保健室に行け!」
「え、いや、大丈夫――」
「誰か! 雨谷についてやってくれないか!」
ダメだ、この教師。熱血にも程があるだろ。話を聞けっての。男子高校生がサッカーボールにぶつかったくらいで大袈裟なんだよ。
「ひとりで行きます!」
それなりに大きな声を出した。体育教師は納得したようで俺を送り出す。背中ではボールを蹴ったサッカー部のやつが、両手を合わせて謝罪の言葉を叫んでいた。