翌日の放課後、俺は駒木さんと最近の日課になっている修学旅行のしおり作りをしていた。
この時間は集中したいのに、昨日新たな問題が増えたせいでままならない。
好き…柊のことを、俺が…?
いやいやいや、ないだろ!好きになるとかならないとか、あいつをそういう目で見たことなんて…
そもそも俺の今までを思い返してみろ。告白されてなんとなく付き合ったりしたことはある。相手の子はイケメンと付き合いたかったとか彼氏がほしいとかそんなもんで、結局はそれなりに恋人らしい感情を見せてきただけだ。俺もそうだったように。
なら、柊はその子たちと何が違う…?
あいつが男だから?
…あいつの瞳が本気だったから?…じゃなきゃ、キスなんかしてこないだろ。
あーもう分かんねぇ。
そういえば、駒木さんは国語教師の高瀬って先生が好きなんだよな。
俺は頭の中の整理がつかないまま思い至って口を開いた。
「駒木さんはさ、いつ好きって思ったの?」
顔を上げた駒木さんはぽかんとして、それから赤面した。
しまった。ストレートすぎたか。
「いや、ごめん。 好きってどんな感じなのかなって、その、よければ教えてくれませんか」
「あはは。突然何を言い出したかと思ったよ〜」
朗らかに笑ってくれて助かった。会話下手くそかよ、俺。
「好きになった瞬間か〜。私の場合はすごくはっきりしてるんだよね」
頬杖をついた駒木さんの言葉を待つ。
「1年生の時に、廊下で遊んでた男子とぶつかっちゃって階段から落ちそうになったことがあって。 やばい!って思った時に、助けてくれたのが先生だったんだ」
なるほど。硬派で真面目キャラのくせに筋力があったってわけか。それは反則だろ。
「腕を掴んで守るように抱きとめてくれたんだけど、私びっくりして腰抜かしちゃってさ〜。保健室まで連れてってくれたの。なんかもう、一連の動作がスマートでカッコよくて、好き!って」
大人しそうに見えて話してみると意外と天真爛漫な駒木さんらしい。表情をころころ変えて話してくれる姿に思わずふっと笑うと、彼女は頬を赤らめて不満顔をする。