二学期の期末テストは少し早めに行われる。修学旅行があるためだ。
そして今日がテスト最終日。三限で最後の教科を終えたクラスの雰囲気は、まあ浮ついている。
俺も今回ばかりは小躍りしたいくらいの解放感があった。
テスト勉強と実行委員の仕事が重なったのはそれなりに俺を疲弊させた。もともと面倒なことは嫌いなのだ。クラスの前で話さなければならないことも多く、やっぱまとめ役は向いてないと改めて思う。
というかほんとに、最近睡眠が足りてなかった。肩が重い。身体が重い。早く帰って寝たい。重力に負けて机に突っ伏す。
「遥風」
「…なんだよ」
俺をそう呼ぶのはただ1人。ここにもあった…俺の頭のキャパを軽く半分は占めてくるやつ。
「大丈夫? 珍しく疲れてるね」
柊は本気で心配してくれているのだろうが、今は勘弁してほしい。
おまえに近づかれると、心臓疲れるんだよ、マジで……
「今日は委員会も部活もないんでしょ? 一緒に帰ろ」
「んー…」
ぼーっとした頭で曖昧に答えると、柊は困ったという顔をする。
「なんかほんとに心配だから、今日は俺が遥風を送る」
「…おまえの家のが、先に着くじゃん」
「そうだけど。たまにはいいかなって。ね、ほら、立って。寝るなら家で寝た方がいいよ」
柊の言う通りだ。俺は眠たい頭を無理やり持ち上げて、荷物を持った。
歩き出す前に、柊がぺたっと俺の額に手のひらを当ててくる。
ただでさえ思考が遅い今、俺は咄嗟に反応できなくて身を固めた。