次の日、俺は久しぶりに自ら遥風の元へ向かう。

「…おはよう。遥風」

遥風が嫌なら無視していいと言ったのは俺だ。
なのに緊張して顔が見れない。

「…はよ」

遥風はいつもの素っ気ない感じで返してくれた。俺はそれが嬉しくて、顔が綻ぶのが自分でも分かる。

「お、喧嘩は終わったのか?」

海堂が低めの声で言った。喧嘩…俺が一方的に悪くて、勝手にいじけてただけなんだよね。なんと言ったものか…考えあぐねていたら、遥風がぼそりと呟いた。

「喧嘩じゃない。 俺が怒らせたと思ってただけで、柊は、別に、…」

そっか。遥風は俺が怒ってると思っていたんだ。

「なんか雨谷、顔赤くない?」
「は…!?」

浅井の言葉に遥風が素っ頓狂な声を上げた。俺は、信じられない気持ちで遥風の顔を見る。

耳まで、真っ赤だ。

ねぇ、待って。この反応って、

「な、なんでもねーから!」

なんでもないってことはないでしょ、ハルカくん。
絶対、俺に告白されたこと思い出したでしょ、今。
意識してるってことでいい?

調子に乗った俺は遥風の顔を覗き込んで微笑む。

「遥風、かわいい」

声は極力抑えたから、遥風にしか聞こえていないはず。

「バカ柊…!!」

返ってきたのは罵倒だ。めちゃくちゃ俺を睨んでいる。
うーん。こういうところがダメなのかな、俺。