上手くいかないことは立て続いた。

クラスのやつの何気ない言葉にプライドを引っ掻き回された俺は、1年ぶりぐらいの体育に参加した。
体育教師の制止を聞かず無理やり走った俺は、当然のごとくぶっ倒れた。

俺ってほんとバカ。遥風とは喧嘩になるし、こんなところでひとり死にそうになってるとか…。

校舎裏、保健室に向かう途中でひとり整わない呼吸に焦っていたら、「おい、」と聞き慣れたぶっきらぼうな声が降ってきた。柄にもなく冷静ではなかった俺はそれが遥風だと理解するのに時間がかかった。でも、彼を認識して心の底から安堵した。来てくれた。嬉しい。俺が悪くて喧嘩していたのに。自分勝手な思考を抱えながら、俺は遥風に縋った。

「っ、はるか、」
「息吸いすぎだろ。吐けよ」
「わか、ってるっ…! けど、」

そうだった。俺、息しなきゃなんだった。遥風が来てくれたことに浮かれて一瞬忘れかけていた苦しさを思い出した。
――途端に、酸素の供給が途絶える。

「んっ…!? はっ、る…っ、」
「……ふっ、…は、はっー…」

え、なに、今の…?
時間にして数秒…いや、頭が追いつかなくてもはや分からない。

「な、はる、か…? おま、いま…」
「治ったか?治ったな。さっさと保健室行くぞ」

キス…された……
え、なんで? どういうこと?遥風ってそういう…いや、違う。
保健室で遥風の顔を見て悟った。真っ青な顔してるんだもん。後悔、してるんだろう。
咄嗟にとった人命救助の方法を、完全にミスったと。

俺は、遥風が来てくれて安心して、それ以上に嬉しかった。残念なことに苦しくてあんまり覚えてないけど、思いがけずキスまでできてドキドキして、胸が苦しいくらい高鳴った。でも遥風は、間違ったと思ってるんだ。

俺は勝手にショックを受けて、遥風のジャージを握って力を込めた。