そのうち遥風の転校前の話も聞いた。そんな話をしてくれるようになったのが嬉しくて、でも傷ついた遥風を思うと胸が痛い。遥風を傷つけたやつに怒りも湧いた。
ずっと怒っている俺を、遥風はまた笑った。

「怒るよ。俺、遥風のこと好きだから」

この時俺がどれだけドキドキしていたか、遥風は知らないだろう。

「え、俺今告られた?」

遥風は軽い調子で、いつも俺がするみたいに茶化したのだから。

好きだと言うのはこれで二回目だ。最初の一回は、遥風を好きだと自覚した日。あの時よりも、今の好きの方が断然重たいものを乗せていた。
遥風にはまるで伝わらなかったけれど。

そのすぐ後、俺の中学の同級生の駒木と遥風が委員会で一緒になったことを知った。
駒木と話す遥風を見て、俺はびっくりして固まった。

だって、めちゃくちゃ優しい顔をしている。

口調も何もかも、俺といる時のそれとは違う。駒木は可愛い。俺もそれは思う。遥風は、駒木のことが好きなのではないか。
そんな憶測が頭を支配して、遥風には子どもっぽい対応をした。遥風は呆れたかな。
あーあ。喧嘩したかったわけじゃないのに。