なんとなく、少しだけ彼のことが見えてきたところで事件発生。
俺のサボりがサボりじゃないことがバレた。

口止めのために呼び出したところで、遥風が予想外の反応を見せる。

「いや、ほら、浅井と海堂が――」
「遥風! おまえの口から友達って言葉が出るなんて!俺今めっちゃ嬉しい!」
「だからちが、」
「ナゲット食べるか? 1個やるよ」

口では茶化して友情を喜んだけれど、内心は違った。
内側から昂るような、言い知れぬ感情が込み上げてくる。
…野良猫が一瞬擦り寄ってきたから?
いや、それよりもっと、大きな何か。

不確かでかたちの見えなかったものが、徐々に姿を現す。
人が人を好きになる瞬間なんて、曖昧でちぐはぐなものだと思っていた。

けれどはっきりと覚えている。

「ふっ、おまえ、その格好で…ほんとバカ。……頼りにしてるから、さっさと治せよ」

遥風が初めて笑った。それは俺にとってとても大きなことで、ガツンと衝撃を食らったような気分だった。胸が甘く疼いた。

自分が男を好きになるなんて思ってもいなかった。俺の人生において前例のない事態。戸惑ったけど、案外すぐに受け入れた。
だって、遥風が日に日に可愛く見えて仕方ないんだ。