柊汐凪はとにかくうるさいやつだった。俺の素っ気ない返事を気にする素振りもなく休み時間の度に質問攻め。移動教室なんかも勝手に着いてくるし、そもそも柊は知り合いが多く、そいつらも必然くっついてくるわけで。俺の周りはいつも騒がしかった。

静岡のどこから来たのか、お茶が有名だよな、俺飲んだことない、今度お茶淹れてよ、え、メロンも有名?静岡超いいところじゃん!

最初は質問に答えるだけだったが、全然めげないので敢えて会話を広げてこちらから話を終わらそうとしても、それを上回って話が始まるのだからどうしていいのか分からない。

でも柊は、一度も俺の転校の理由を聞いては来なかった。普通、気になるだろう。俺に興味がなくても理由は。
俺だってこんな時期に転校生が来たら気になる。でも柊は聞いてこない。本当に気にならないだけなのか、気遣い、なのか。それも分からなかった。

俺に絡んでくるのも、すぐに飽きると思っていた。ところが1週間経っても、1ヶ月が過ぎても柊は俺に話しかけた。
おかげで俺の周りにはいつも柊と、柊の友達がいる。
こんなの、俺が描いていた第2の高校生活とは違う。