漠然とした不安が襲って、俺は咄嗟に柊の正面に回り込んだ。

それからガシッと両手で顔を挟み、――自分の唇で柊の口を塞いだ。

「んっ…!? はっ、る…っ、」
「……ふっ、…は、はっー…」

どれくらい経ったか、ゆっくりと離れ、なんとなく瞑っていた目を開けた。柊はびっくりしたように目を丸くして固まっていて、口をパクパクさせている。

「な、はる、か…? おま、いま…」
「治ったか?治ったな。さっさと保健室行くぞ」

やっべー。何してんだ俺。そもそも過呼吸で死ぬとかないだろ。いやでもこいつの場合貧弱そうだから…って、そうだとしても俺、マジで何してんの……?

これ、俺の人生終わったんじゃね。明日には学校中に変態だなんだと噂が広まって、それで……ああ最悪。

俺が腕を引っ張って後ろをついてくる柊はなんも言わねーし。なんなの。コイツ。そもそもあんな無茶してひとりで倒れてるとかおかしいだろ。誰かに言えよ。俺いんじゃん。

…なんだ俺、頼ってほしかったとか思ってるのか。