結果から言うと、柊は完走した。しかもトップ層でゴールしてやがる。
俺は中層で普通にゴールして死にそうになってたけど、柊がグラウンドを出てくのが見えて息を整える暇もなく意識はそちらに向く。
恐らく浅井と海堂も気づいているだろうが、ふたりは行動には起こせないだろう。
放っておこうと思った。
「…あーもう。クソッ。馬鹿柊」
だが気づけば俺は柊の背を追っていて、悪態をつく。
自業自得だろ。そう思うのに、昼休みの何気ないクラスメイトの言葉に少なからず傷ついたであろう柊を想像したら、無視できるはずがなかった。言葉って、重いんだよ。『見損なった』と友達に言われた時、身をもって実感済みなのだ、俺は。
保健室に行くつもりだったのだろう。すぐに柊を見つけた。力尽きたのかしゃがみこむその背はとても小さく見えた。
「おい、」
ビクッと肩を揺らし、弾かれたように顔を上げる柊。一瞬取り繕うような笑顔を見せて、俺の顔を見た途端それを消す。
「っ、はるか、」
「息吸いすぎだろ。吐けよ」
「わか、ってるっ…! けど、」
こういう時、どうすんだっけ。息吸いすぎて苦しいなら吸わなきゃいいのか。口塞ぐとか言うよな。でも俺ハンカチとか持ち歩く系じゃねえし、たぶんこいつもそう。
苦しそう。こいつ、死なないよな…?