結構本気でそう楽観していた俺だが、どうやら外れたようだった。
朝はいつも柊から絡んでくるのに、今朝は来なかった。それどころか目も合わせようとしない。最初は純粋に何事かと思ったけど、次第に俺もイライラしてきた。

俺、昨日何もしてないよな? 課題の途中で駒木さんと話し出したのがうるさかったとか?…いや、柊はそんな細かいことを気にするタイプでは……分かんねぇ。もう知らん。勝手にへそ曲げてろ。

そんな険悪なムードのまま昼休みが過ぎ、五限の体育のために各々が着替えを始める。いつも通り柊がしれっと教室を出ようとしたところで、事件は起こった。

「柊ってなんでいつも体育の時いなくなるん?運動神経いいんだろ?てか持久走サボりマジでずりぃから!俺もだるいからサボろーかな」
「あ、俺も〜」

言い出したのは、声のデカイあいつだ。俺はどうにも波長が合わない。柊ともあまりつるんでいるところは見ない。他のやつまで言い出して、俺は内心イラッとした。

うるせぇな。何も知らないくせに勝手なこと言うな。そもそも柊はサボりじゃねーんだよ。

今はその柊にイライラしていたはずだが、その矛先は完全に悪ノリしているやつらに向いていた。たしかに何も知らないのだから仕方ないとも言えるが、あいつらに関しては言い方に問題がある。面と向かって言うんじゃなく、チラチラ柊の方を見ながらわざと聞こえるようにするのが気に食わない。