おいおいおい、あの女子、大人しそうなフリしてやってくれてんな。

それが俺の感想。もうどこから説明すればいいのやら、いや、そもそも俺の話を誰が信じるんだろう。完全に興奮している藤村には今何を言っても届かないだろうし、とりあえず他のやつだけでも……――

そう考えて俺はチラりと教室を見回した。目が合った仲間だと思ってたやつは、険しい顔で『雨谷、見損なったぞ』と一言。

俺はその瞬間悟った。俺のこのクラスでの…いや、学校での立場は完全に終わったのだと。もはや誰も俺を信じないし、裏切り者の最低なやつとして記憶に残るのだろう。

全てがどうでも良くなった。

結局、人との関係なんてその程度のものなのだ。
俺は孤立して、学校での居場所を失ったも同然だった。

その頃親の仕事の都合で転勤の話が出ていたが、俺が今の学校を辞めたくないとギリギリまで引き伸ばしていた。
だがこうなれば一転、好都合。ここにいる意味はもうないと、俺はその場所を去ることにした。親は急に引越しを承諾した俺を怪訝に思ったようだったが、適当に誤魔化した。

夏休みの間に引越しと退学、転校の手続き諸々。試験もあったので忙しい夏だった。学校でのことなど思い出す暇もないくらいには。

2学期、新しく学校生活が始まる日に俺は決めた。特定の友達とかそういうのはいらない。男女の友情なんて以ての外。話しかけにくい、近づきがたいやつ。それぐらいでいいのだ。
壊れる関係がなければあんなことにはならない。