中学に上がると急に背が伸びた。同級生の中ではまあまあ高身長の部類に入った。それは高校時代もそうだ。さらに髪型を気遣うようになると俺はモテた。告白もよくされた。

性格も人見知りをする方ではなかったので友達も多い。所謂クラスの中心グループに所属し、毎日仲間とくだらないことで笑っているのが馬鹿みたいに楽しかった。

その頃俺は恋愛にあまり興味がなく、男友達といる方が気が楽で告白は全て断っていた。そりゃあ、可愛い子とか美人の先輩に告白された時は素直に嬉しかったし、OKしようかと思ったこともあるけど。

事件は2年生に進級してすぐに起こった。俺がよくつるんでいたグループの藤村という男の彼女が、俺を好きだと言い出したのだ。

俺はその女子が藤村と付き合っているのを知っていたから当然振った。あいつを裏切るようなことはするな、と。それから俺は一晩迷った。このことを藤村に言うべきか。その日は決めかねて翌朝を迎えた。

ところがどういうわけか、学校に行くとやたらと感じる視線。これはいつものとは違う。どこか居心地の悪さに困惑していたら、聞こえてきたのは衝撃的な会話。

『雨谷、藤村の彼女と寝たらしいよ』
『うわ、最低〜。雨谷くんイケメンなのに、ショックすぎ』

は?なんだよ、それ。俺は昨日振ったはずだ。そんな変な噂、誰が…

『雨谷っ!』
『藤村…』
『おまえ、ふざっけんなよ!?』

藤村は教室に来るなり俺の胸ぐらを掴み怒鳴る。俺の話なんて聞く気もないって感じで、俺はしばらく何も言えなかった。

『人の彼女奪うとか、どういう神経してんだよ…! おまえがそんな奴だとは思わなかった』
『ま、てよ、俺は…!』
『ミカちゃんが、おまえに無理やり迫られて断れなかったって泣きながら言ってきたんだよ』
『は…?』