「…なんでもない」
「でも遥風、怖い顔してる」
「悪かったな。元からこんなんだ」
「違うよ。無愛想な言い方するだけで、遥風はいつも優しい目だ」
「だから…!そんなんじゃ、」

肉まんの温もりがすっかり冷めた包みをぐしゃりと握りしめ、声を荒らげてハッとした。
柊はじっと俺を見据えていた。

「遥風は転校してきてからずっと、俺たちに壁を作ってるよね。でもこの前、プリントを届けてくれた時、遥風が笑ったのを見て思ったよ。本当はこんな風によく笑うんだろうなって」

俺は何も言えずに俯いた。あの時は、弱そうな見た目で俺を頼れと言う柊があまりに無邪気で、思わず笑ってしまったんだった。

「遥風。 俺たちの間に一線引いてるのは、前の学校で何かあったから?」

柊から踏み込んで聞いてくるのは初めてだった。
いつもみたいに揶揄ったり茶化したりしているんじゃない。まっすぐ俺を見て、俺を知ろうとしている。

「…べつに。俺が悪いんだよ」

気づけば口に出していた。靄のように胸に残る苦い記憶。

ほんの半年前のことだ。