「それで実行委員やることになったの?」
その日の部活後、俺は何故か柊の家に来ていた。…というか呼び出されたのだ。明日提出のプリントを机に入れっぱなしなのを忘れていたから持ってきてほしいと。柊の家は一応俺の通学路にかかっているからだろう。浅井や海堂は逆方向になる。
さっさと玄関先でプリントを渡して帰ろうと思っていたのに、額に冷たいシートを貼り付けた柊に出迎えられて断る間もなく部屋に通されてしまった。柊に今日の学校での話を聞きたいだなんて無茶ぶりされて、今に至る。
「あれで断るのはさすがに無理。 俺、絶対向いてないのに。修学旅行とか陽キャが楽しいだけでしょ」
「うっわ、遥風、発言が悲しすぎ! だいじょーぶだよ、遥風のことは俺が楽しませるから!」
「…いいって、そういうの」
修学旅行は12月だ。三泊四日で行き先は九州。公立の進学校なんてそんなもんだ。
「遥風って、黙ってればモテるんじゃない?」
「はぁ?」
突然柊が言うので俺は眉間に皺を寄せて彼を見る。
「なんだかんだで優しいから。そういうの断れないのとか、いつもノート見せてくれるし、今日も来てくれた。口調が冷たいから、黙ってれば、ってこと」
「…なんか、失礼じゃね?」
「え〜、そう?」
柊はあはは、と楽しそうに笑った。それからこちらを見つめて言うのだ。
「俺は遥風のそういうとこ好きだよ」
一日寝てたせいか寝癖だらけでパジャマで締りのない顔。教室で振りまいてる元気の源の笑顔とは違う。ふいの1ページを切り取ったみたいな。今ここには俺しかいなくて、こいつのこんなだらしない…隠したい部分は俺しか知らない。