10月に入るとようやく風が涼しくなってきた気がする。夜は冷えるくらいだ。昨日は放課後急な雨に降られて凍えるかと思った。…たぶんそのせいだ。柊は今日学校に来ていない。

今朝、聞いてもいないのに『今日休む。俺いなくて寂しいと思うけどごめんね』とふざけたメッセージが届いた。

無視してやろうかとも思ったけど、できなかった。別に心配とかしてない。むしろ静かでラッキーなくらいだ。…なんとなく、寝ている柊を想像したらスタンプでも返してやろうって気になっただけで…心配とかじゃないし。

俺はぼんやりと窓の外を見下ろした。

あ、駒木さんだ。今日は髪結ばないんだな。うわ、半袖寒そう。あの体育教師、子どもは風の子だと思ってるだろ。自分はしっかり上着着てるくせに。うちのクラスの担当はその点防寒させてくれるよな…――

「…――雨谷、頼めるか?」

ふと誰かが呼ぶ声に思考が教室に戻ってくる。
たしか今は担任の授業で、その前に何かの役員を決めなきゃいけないとか言ってたな。

「このクラスの修学旅行の実行委員」
「え、」
「4月の時点でそれぞれ委員会が決まってしまっていてな。 役職ないのは雨谷だけってことになるんけど、せっかくだからやってみないか。他クラスと関わるいい機会にもなるはずだ」

いやこれ、断る方が無理な空気じゃん。
あー、めんどくさい。俺は内心でため息をついて、それから「やります」と頷いた。