いやいやいや、なに見惚れてんだよ、俺!
柊は男だぞ。学年一の美女の駒木さんの方が断然可愛いだろ。いつも下ろしてる髪を体育の時だけ結い上げるのとか、窓際の席だから拝める特権を持ってんだよ、俺は!
そもそも女子みたいな変な質問してくんな。サボり魔の優等生くんは大人しく黒板だけ見てろっての!

俺はメモの裏に『ウザイ』と殴り書きして、投げ捨てるように柊の机に放った。

もう今日は一日寝てやる。柊はどんな顔をしただろう。答えになってないと不満に思ったか?

伏せって目を閉じても眠気はやってきてくれなかった。代わりに居座るのは、さっき見た柊の無邪気な表情。

いや、あれは、あれだろ。美術館で有名な絵画を見た時のさ、綺麗だなってなる、あれ。そうだ、柊は芸術品なんだ。こいつのルックスは絶景を見事に描き納めた絵画と同じ。…あんまり持ち上げるのも癪だが、ひとまずそれが1番しっくりくる。

柊を目で追ってしまう理由は美しいものを愛でたいという人間の心に付け込まれたから。あいつのことを考えてしまうのは、思わぬ秘密を知ったから。

それ以上でも以下でもないだろ!