一限から歴史はきつい。俺は眠気に耐えながら、いっそのことこのまま夢の中へ身を任せてしまおうかとぼんやりした頭で考える。隣の席の柊は相も変わらず背筋を伸ばし真面目にノートを取っていた。休んだ分を取り戻すためだ。

ふと、半分しか開いていない視界の端に紙切れが映り込んできた。横を見ると柊がそれを指さしている。ご丁寧に4つ折りにしてあるメモを開けろということらしい。今の今まで眠気に耐えかねていた俺は気だるげにメモを見た。

『ハルカ、好きな子いる?』

柊は字も綺麗だ。行儀よく羅列したそれに、俺は声に出さずため息をもらした。
集中して授業を受けていると思ったら、こんなくだらない悪ふざけを考えていたなんて。
どうでもいいだろ、という意味を込めて柊の方を睨みつけると、彼はにこっと微笑む。

朝開けた窓から風が吹き込んで柊の髪を嬲った。くすぐったそうに目を細めるその様が、なぜだかとても綺麗に映った。

数瞬、視線を逸らせなくて不覚にも見つめる形になってしまい、俺は慌てて下を向く。つい先程まで穏やかすぎるほど静かな脈を打っていたはずなのに鼓動が早い。

整った顔立ちをしていると何をしても華がある。凛々しくも細めの眉、筋の通った鼻、焦げ茶の澄んだ瞳。奥二重で切れ長だ。金風を浴びただけで、なんでそんなに……