翌週になって、三国から連絡があった。
 決裁が承認され、正式に社内でプロジェクトとして立ち上がったらしい。遂行責任者は、裏の計画通り、桜井に決まった。
「侑希も気にしてたけど……本当にあれで良かったの?アイデアを出しただけでなく、副社長を説得したのもあなたなのに」
「それはつまり、成功するって、少なくとも三国さんは考えているってことだよね」
「あー……。まあ、そうね。利益の多寡はともかく、事業としては、ある程度継続する、かな」
 ただ、藤阪については、正規雇用にすることは難しいと伝えられた。桜井が人事に掛け合ってくれたようだが、自慢できることが、体力とスーパーの特売りチェックだという彼女に与える業務が、餌やり以外に見つからなかったのだ。
「時給がさほど変わらないんだとしたら、別にバイトでも良くないですか?」
 涼葉も、そこにこだわる理由を知りたがった。
「あの子の大学進学の可能性を、ちょっとでも高くできないかと思って――」
「そういうことですか……。でも、そんな簡単じゃないと思いますけど」
「どうして?」
「仮に月二十万円稼げたとしても、附属の大学の学費一年分にもならないですよ。時間があと半年もないんですから。だとしたら、外部受験ってことになりますけど、彼女自身が言ってましたよね。成績は低位だって。今は少子化ですし、選ばなければ、それはどこかに行けるかもしれないですけど。その程度のところに進学するくらいなら、高卒で働いたほうが、よくないですか?」
「前にあの子がうちの大学に来たとき、改めて受験生用のガイドを見たんだ。あーしたちのときにあったのかは覚えていないけど、総合型選抜っていうのを見つけた。しかも、それなら奨学金の獲得もしやすいみたいなんだ」
「昔はAOって言ってたやつですよね。でもあれに引っかかるような才能が、彼女にあったようには思えないですけど」
「一般企業で社員として働いた、というのはどうだろうか」
「うーん。それだけじゃ、一芸とは言えないと思いますけど」
 確かに、それはその通りだった。
 ただ、労働の内容次第では、売り文句にできる可能性があるのではないか。
 面接は一発勝負で、判断する相手も人間なのだから。