帰り道、おそらくは言いたいことが、蓄積されていたのだろう、ビルを出てからずっと、涼葉は一人で喋りっ放しだった。
「何度も説明してますけど、お化け屋敷が認められたのは、綺里姉の土下座が理由じゃなくて、規律を守る具体的な方法を、後日、生徒会が資料にまとめて訴えたからなんですって」
 さらには、この会議で副社長が口をはさまなかったのも、綺里の訴えが敵の琴線に触れたから、ではなく、周囲の複数の客が、あのときの様子を写真に撮っていたことが理由だという。
 ネットにそんな画像が出回ったとき、年配の男と若い女子では、世間がどちらの味方をするかは明らかだ。彼の無実を証明できるのは、隣にいた涼葉だけ。万が一、不測の事態におちいったときの保険が、富田には必要だったのだと、怒濤の勢いで解説した。
 なるほど、もしそうなら、この会議に彼女を同席させたことの意味はあったということになる。
 結果オーライだとひそかに満足していた心の内を見抜いたかのように、彼女は声を高くした。
「とにかく。金輪際、土下座はしないって、約束して下さい」