夏休みはあっという間に過ぎ去り、二学期が始まった。
 朝から晩まで、デイトレーダーの真似事をしてみようかと思っていたが、ほとんど達成できなかった。
 文化祭の準備と、叔母の仕事が比較的順調で、送り迎えが頻繁にあったことは仕方ない。だが、それ以外の時間も、落居や十島に海や川、花火と連れ回されたのだ。
 居間の間仕切りは無事取り除かれ、広いLDKになった。
 落居の父の紹介で、転居や解体で処分されることになった家具を扱う業者を紹介してもらい、木製のアンティークなサイドボードやダイニングセットを手に入れることができたおかげで、叔母の模様替えは充実したようだ。
「本当、うれしいわ。ずっと気になってたの。今までのテーブル、実用的には問題なかったんだけど、家の雰囲気とはまるで合ってなかったから」
 祖母が買ったものらしく、丈夫すぎて捨てるきっかけがなかったのだそうだ。
 詩乃の感性に塗り替えられた部屋を見て、この世の物の価値基準は利便性とコスパだけでないことを計らずも学ぶことになった。