次の文化祭準備の日、登校すると、クラス中が騒然としていた。
 群衆の中心にいたのは、携帯の画面を見せびらかしていた十島だ。
 彼女は圭太を見ると、激しく手を振り、その動きにクラスメートの視線が一斉に集まった。
「お前、凛音ちゃんとどんな関係なんだよ」「頼むから連絡先教えてくれ。一生、奴隷になるからさ」
 男子たちが、争うように近づいてきた。
 いったい、平穏な日常はいつ取り戻せるのか。
 大道具の製作を手伝う間も、クラスメートはもちろん、見知らぬ他のクラスの生徒や上級生にまで、ひっきりなしに話しかけられた。
「学校中に名前が売れたな」
 そう言う落居はなぜか冷めた態度だ。
「みんなが見ているのは、僕じゃなくて芦川だろ。ところで、今、少し話してもいいか?」
 周りに十島がいないことを確認してから声をかける。
「OMのお父さんって、工務店だったよな。ちょっと教えてほしんだけど」
 改修について尋ねただけだったにもかかわらず、是非やらせてくれと、彼は誰の許可も取らずに即答した。