家に戻り、改めて勧められた車種を調べた。
 性能だけ見れば、日本のバイクに利がありそうだが、ベスパには根強いファンがいるらしい。
 一晩考え、リセールバリューという点において有利だという結論に達した。
 次の日、朝一で教えてもらった店に出向く。
 応対したのは、またしても素っ気ない店員だったが、前日に耐性がついていた。
「相場より少し高いって詳しい知り合いに言われたんですけど、程度がいいからでしょうか?」
「程度もそうだけど。生産国がイタリアだし、走行がまだ五千未満だろ。あとは、メタリック系のカラーはタマ数が少ないっていうのもある」
 淀みなく答えたその言葉に、素人を騙してやろうという気配は皆無だった。
「わかりました。これに決めます。免許がまだなので、取り置いてもらえますか?お金は今払いますから」