三日後、朝から楽しそうに出かけた詩乃は、深夜、日が変わった頃に帰宅した。
 圭太は、すでにベッドの中で深い眠りの中にいたが、普段聞きなれない、車が家の前で停まる音に目が覚めた。
 不審に思い、窓に近づく。車が去ったあと、門灯にぼんやり照らされ、詩乃がふらふらと玄関を入るのが見えた。
 確かホテルを予約してあったはずだ。
 慌てて階下に下りると、まるでそれを避けるように彼女は自室に入った。
 圭太の気配は察していたはずだ。
 一瞬ためらい、だが、思いきって扉を叩く。
「叔母さん、大丈夫ですか?」
「あ、圭太さん。ごめんなさい、起こしてしまって」
「いえ、こっちは問題ありません。それより何かあったんですか?」
 しかし答えがない。
 彼女の返事を待つ間、玄関の施錠を確認しようと、一歩廊下を進もうとしたときだった。
 足にじゃりっとした感覚。
 膝をつき、床を見た。
 砂と土。
 どうしてこんなところに?
 そして気づいた。
 ずっと先からそれが続いていたことに。歩幅程度の間隔で。
 慌てて玄関に走る。
 詩乃の靴がなかった。
 部屋まで戻り、もう一度声をかけた。
「叔母さん、大丈夫ですか?警察、呼びますか?」
 すると扉の向こうで人の動く気配があり、わずかにドアが開いた。
「ごめんなさい、心配させて。私は大丈夫だから。あなたはもう寝てちょうだい」
 隙間から垣間見えた表情は、憔悴しきっていた。
 どこから裸足になり、どこからタクシーに乗ったのだろう。
 しかし彼女はそれ以上会話を続けようとはせず、すぐにドアを閉じてしまった。