ルフレはどこからでも行ける場所ではない。
六つの特定の場所から行くのだ
今回は北にある光の宮から王都にして、城のルフレへ向かう
ルフレ輝きと言う城名であるが城を守る六つの塔がある。
光と闇の塔が内側に、火、水、風、土は外側から城ルフレ、国オフィールを守る
その塔にはそれぞれ神子長と神子達が居る
(セェーン)(ソンブル)(マルス)(アクア)(ウィン)(ファス)の名を受け継ぎし神子長、騎士団長、政治家達も居る。
だが、六騎士団長、神子長、宰相は選ばれし者として城ルフレで生活を許されてる
それ以外の者は塔からの通いである。
馬車に揺れ、城ルフレへ向かう
どう通ったか、白い神殿に辿り着くと、キースが前に出て、ハワードがキースの後ろへ移動し柱の中を走り抜けると光が輝き、ペルセフォネとルーベルトは眩しく、目を瞑ると、馬と馬車が雲海を走ってる。
雲海に広がる城ルフレと六つの塔、雲海の下は、オフィール国が広がる。
ペルセフォネはそれらを眺める
ここがルフレ、今日からここで生活をする、彼等と共に
ペルセフォネは、神官長、騎士団長、ルーベルトを見て、ハニエルに触れる。
ルーベルトはルフレを見て、ペルセフォネを見る。
まだ、警戒心が強く、自分にも許されてない
許してるのは愛犬だけ
それは哀しいが守らなかった自分の責任
そしてこれから、ルフレで彼女と生活する。
キースは馬車を気にしながら、愛馬を操る
この城ルフレと国オフィールの主
十歳を迎えたばっかりの幼い娘
自分達はこの子達を守り、主として育てるのが使命
しかし王女様は怯え、警戒し、愛犬しか心を許してない。
今は速く城へ向かうしか無い。
馬車は大きな白と金の門を潜り、階段に馬車を付ける
六人は馬から降りて、ハワードが馬車のドアを開けると、キースがペルセフォネとルーベルトを抱き上げて降ろし、ハニエルは飛び降り、ペルセフォネに擦り寄る
二人が降りると神官長も降りる
階段があり、大きく聳え建つ城ルフレ
ペルセフォネとルーベルトはキースの案内で階段を上がり、大きな扉が開き、城内へ入って行く
廊下を歩き、一室に案内され、キースは放れて、付き添いのフランツが残る。
「少々、フランツとお待ちくださいませ」
キースが離れ、二人を休ませる。
しかしルーベルトは落ち着かず、そわそわし諦め、椅子に座り直す。
ペルセフォネも不安となり、ハニエルをずっと体に擦り寄せ、触り続けている。
そんな二人を見守る事しか出来ないフランツ
暫くすると、ノックされ、ジュリウスとマリウスが入って来て、その後ろに二人の男性と、女性の姿がある。
「王女様と宰相様の生活、執務をサポートする、執事と使用人です」
ジュリウスが二人に説明すると、一人が胸に手を合わせ、礼をし、片手を胸に当てる。
「王女様の執務をサポートさせていただきます
執事のセバスチャンです」
セバスチャンは赤毛で、火の使い手だろう
セバスチャンは渋くダンディな風貌の男性で、父より年上だろうなと思ったペルセフォネであるが、実は父と同期である事を、後で驚愕するペルセフォネがいたらしい
セバスチャンと同じように挨拶する彼女
「王女様の生活をサポートさせていただきます、使用人のスーザンでございます」
スーザンはセバスチャンより若く茶髪で、土の使い手のようだ。
青年が前に出て挨拶する
「宰相様の執務をサポートさせていただきます、執事のアーノルドです」
爽やかな好青年で、青い髪、水の使い手
「宰相様の生活をサポートさせていただきます、使用人のアメリアです」
アメリアはアーノルドに似ていて白髪、風の使い手らしい
「アーノルドとアメリアは兄妹です」
マリウスの言葉にペルセフォネ、ルーベルト、ハニエルは納得する
スーザンとアメリアがペルセフォネとルーベルト、ハニエルを連れて、ハニエルは何かに気付いたのか、逃げようとし、使用人は逃さない。
風呂へ入れ、二人と一匹の体を清める
すると使用人達は驚く
ルーベルトの髪はプラチナブロンドと思いきや、普通のブロンドで、光がきらびやかに輝いてる。
ペルセフォネの髪は普通の黒と思いきや、黒髪に星屑のようなきらびやかな輝きがある
『お二人の髪はなんて美しいのだろう』
ハニエルは最初は嫌がっていたが、気持ちよくなったのか、大人しくなり、今はもう寝そうだ。
もちろんハニエルの足をケアしながら
二人と一匹が風呂に入らせてる間、別の使用人達は急いで、部屋と衣服の準備にかかる。
長年、居なかった王と宰相が現れ城ルフレに務める者達は浮かれてイキイキと仕事をこなしていく
まだ十歳という幼き王女と宰相の存在に
幼い王女が、いつか笑顔となるようにと願って
風呂からあがった二人に似合うドレスとスーツを着せて、髪は風の使い手により乾かされ、優しくブラシで梳く
互いの使用人は二人の髪を見て浮かれる。
ペルセフォネとルーベルトは、何故浮かれてるか、解らずに首を傾げる
『かわいい!』
『何、ご主人様でなく天使様ですか、王女様と宰相様は』
二人がキュンキュンしてる事はペルセフォネもルーベルトも解らず、ハニエルは項垂れる

ペルセフォネはハニエルと用意された部屋はクリーム色で統一されてる。
天蓋付きのベッド、テーブルにソファが置かれてる。
ベッドそばにチェストがあり、そこにベルが置かれてある。
それを鳴らせば、スーザンや使用人達が来ると言う
呼び鈴だ。
そしてハニエルの足の負担にならない用にとハニエル専用のクッションもある。
『今日からここが自分の居場所』
ペルセフォネは室内を見て、そのまま外を見る
ルーバルコニーが有り、端の方に騎士の姿が視える
そして視線の先にはルフレの庭が広がる
『何故自分が王女』
ペルセフォネは解らずに居る
明日はペルセフォネとルーベルトの即位式だと言う
国オフィールの王女、ルフレの主、
ペルセフォネは全てが重荷で逃げ出したく、蹲る

ルーベルトは一人、自室を見る
シンプルで木面の部屋
ベッドに机、椅子
これからここで生活し、彼女を支える
それが自分の幸福

夕食、ペルセフォネはハニエルと食べる
料理人が考えてくれたのか、ルイヒの家庭料理で、完食は出来なかったが少し嬉しく感じた。
スーザンにより、着替えて、眠りに付く
スーザンが部屋から出ると、六つの光がペルセフォネを囲む
青年が現れ、悲しそうにペルセフォネを見つめて、触れる
『済まないペルセフォネ』
『やっと会えた』
『ずっと待っていた』
『我等の姫』
『ペルセフォネ姫』
『長い時間、貴女だけを』
六つの光が消え、青年はずっとペルセフォネを視てる
「お休み、私達の姫、今は夢に委ねて」
そう口にし消える。
皆が明日の即位式の為に、休み、警備をしルフレに帳が降りる

朝陽により寝覚める、見慣れない室内に驚くもすぐルフレと思い出し、深い溜め息を吐き出す。
その時、誰かが入って来た。
「王女様、朝でございます、起きてくださいませ」
セバスチャンの声
今、何時か、解らないが、寝てるのも恥ずかしいのでモゾモゾと動き、体を起こす
するとスーザンが入って来て、セバスチャンがベッドカーテンをまとめて止める
スーザンの手伝いにより着替えてて、顔を洗う
食事が用意され、ルイヒの定番の朝食だが、量が多い
「昨日も、思ったけど、美味しいし、嬉しいけど、量が多いから、食べきれない」
「料理長には私から伝えて置きます」
セバスチャンは笑顔で静かに答える
ペルセフォネが食べ終えると食器を調理場へと運ぶ
本来それはスーザンの役目だが、ペルセフォネの“頼み”がある為、セバスチャンが引き受ける
「王女様が量が多いと困ってましたよ、不安の多い王女様を困らせないでください」
「王女様を喜ばせたく」
笑顔で料理人が言うとセバスチャンが呆れる
なら宰相様の料理らと聞きたくなかったが、面倒だから、アーノルドに押し付けよう、そうしよう
「王女様はまだ十歳のお子です」
『宰相様の事は解らないから、あえて王女のみ、彼に伝えておこう、アーノルドは私と違い優しい為、大丈夫だろうほっとこ』

六騎士団長は即位式の支度に駆け廻る為、セバスチャンがペルセフォネの側に寄り添う
時間が近付くと昨日居た部屋へ行くとルーベルトの姿がある
アーノルドとアメリアの姿も
セバスチャンが説明する
「即位式は宰相様と王女様が王座に上がりまして、お二人で挨拶の礼をしまして、王座に座らせ、
宰相様は王座の隣りでお立ちになってください」
立ってるのが辛いなと、ルーベルトは思う
「その後、挨拶が行われ、手の礼で返事をしてください」
「寝そう」
「疲れそう」
ペルセフォネとルーベルトが素直に呟く
それは困る
この即位式はオフィール全土に流れる
王女として宰相として見せないと困るし、子供にはこの儀式はきついものも事実

早朝、各町の教会より、昨日ルフレに王女と宰相が入られた
ルイヒ出身者
本日即位の儀が執り行われる
そう神父より伝言を流され民はざわめく
ルーベルトの母は泣き
ペルセフォネの両親は寄り添い、その伝言を聞き、広場へと向かうのだった。

セバスチャンは二人を視る
「我慢してください、と、言いたいんですが、挨拶は簡単に済ませますから、耐えてください」
セバスチャンは幼い主の為、言葉を選び説明する
おそらく二人はルフレに来ての見本が居ない為、緊張や不安で居るに違いない
ペルセフォネはペルセフォネで王女という立場や重荷、不安で儀が失敗するのではないかと恐れてる
ルーベルトはずっとペルセフォネを見て、アーノルドとアメリアは苦笑する
側に居たい、支えたいと思ってるのに、上手く伝えられずに動けない
スーザンとアメリアが来て、二人を連れて行く、禊を行うためだ。
案内された場所につくと白い衣に着替えさせられ、明りの少ない、薄暗い室内の岩場の池で、スーザンのみの手伝いで体を清水で清める
禊は十歳の誕生日に行うが、ペルセフォネは儀式当日が誕生日の為、前日に行った。
禊が終わると、体を暖め、スーザンはペルセフォネにクリーム色のドレスを着せて向かわせれば、ルーベルトも白いスーツを着て、待っていた。
彼もまた禊を行ったのだろう
スーザンとアメリアは二人を座らせ髪を櫛で梳く
軽く癖のあるルーベルトに、ストレートのペルセフォネの髪をまとめる
二人の髪を活かしセットする
そしてペルセフォネに王女としてのシルバーのティアラを付け、スギライトのペンダントを付ける
アメリアもルーベルトにスギライトのブローチを付けて微笑み、準備完了とし、セバスチャン、アーノルドが迎える。
即位式が始まる。
まだ城内が解らないから、ペルセフォネとルーベルトはセバスチャン、アーノルドに続いて歩く
目の前に城の入口のような、白と金の扉が視えて、その前で止まる。
ルーベルトは右後ろに立ち、セバスチャンとアーノルドはノブを掴み、時を待つ
オフィールの民は映像として謁見の間を視てる
十時の鐘の音が鳴り響く
「オフィール国、建国五千年のこの年、王と宰相様がルフレにお戻りになられました。
静かなる町、ルイヒから来られた、乙女の女神、ペルセフォネ王女様
王女様を支えし光の者、宰相ルーベルト様のお出ましです」
セバスチャンとアーノルドがゆっくりと扉を開け跪く
ペルセフォネがゆっくりと前へ歩み、ルーベルトが後ろに付いて行く
すると左右に居るルフレに仕える者達が二人に合せて、跪く
人々は二人の姿に驚く
『あれがペルセフォネだと言うのか?』
『ペルセフォネはあれほど美しかっただろうか?』
ペルセフォネの両親はペルセフォネの姿に驚愕する
ルーベルトの母もルーベルトの髪に驚く
『あれが私の息子というの?』
「あのお二人が王女様と宰相様、なんて美しい」
「十年も解らなかったのか」
国民は新たな王女と宰相に衝撃を受けた
優美過ぎる幼い国の主
今までで、あれ程美しい人物は他に居ただろうか?
何故今まで見付からなかった

ペルセフォネとルーベルトは人々の間を通り、王座へ上がる階段を上がり、王座の前に立つと皆の方へ見る
ルーベルトはペルセフォネを先に、上らせ、振り返ると一礼し階段を上がり、スピカの右側に立つ
ペルセフォネとルーベルトは胸で合掌し一礼すると皆も合掌し手の親指を唇に当て一礼する
ペルセフォネは王座に座り、ルーベルトは横に立つ
星屑の王女と太陽の宰相をオフィールに知らしめた瞬間だ。
ルーベルトは右手を上げると神官長が前に歩み出て一礼する
「神子達を統一する神官長を努めさせていただきます」
そう彼は言い、神官長が後ろに下がると光の者達が前へ歩み出る。

光の者達の前に、代表者として騎士団長のキースと神子長の男性立っていて、その後ろには光の騎士団と神子達が居るが、全体的に、彼等の人数は少ない
オフィール全体で光の(マハト)を持つ者が少なく、珍しい存在なのだろう
「光の神子長を務めさせてもらってます光セェーンでございます」
光セェーンが一歩下がると光セェーンの隣りに居たキースが一歩前に出て、剣を出して刃を横にする
「光の騎士団長・キースでございます
王女様の光り輝く未来に」
「「輝く未来に」」
光の神子達、騎士団が口にしてキースと光セェーンが挨拶し神子達は深く首を下げ、騎士団は剣を掲げ、ペルセフォネとルーベルトが挨拶を返す
キースと光セェーンが外から後ろを向き、音を鳴らせば神子、騎士団は後ろを向き、元の場所へ戻り剣をおさめる
光の騎士団、神子達は明るいより神々しく強いイメージがした。

闇の神子と騎士団が前に出る
やはり光と同等、人数が少なく珍しい存在なのだろう
「闇の神子長・闇ソンブルと申します」
闇ソンブルが挨拶するとスピカがそれを返す
ハワードが静かに前へ歩み闇ソンブルの横に立つ
「闇の騎士団長・ハワード、王女様に静かなる時を願いて」
「「静かなる時を」」
闇と光と違い包むような力を感じる
闇の者達が下がると火の神子達と騎士団が前に出る

火が舞う
四元素の一つ火
光と闇の人数よりはるかに多く居る
「火の神子長、火マルスです」
「火の騎士団長・アベルです、王女様を守りし剣の忠義を」
「「忠義を」」
おそらく火の者達は心が熱く、強いのだろう
しかし感じる力は温もりの様に温かい
火の騎士団が剣を掲げ、それをしまい、後ろへ下がると水の者達が流れる様に前に出る

「水の神子長、水アクアでございます」
水の神子長は長の中で唯一の女性
「水の騎士団長のマリウスです、王女様を守りし水に」
「「守りし水に」」
水の力は流れと闇のような包まれ感を感じる
そして流れる様に下がり、風の者達が前に出る

「風の神子長、風ウィンと申します」
「風の騎士団長フランツです、王女様を包む風となりましょう」
「「風となりましょう」」
風が舞う

最後は土の者達
「土の神子長、土ファスと申します
土ファスは神子長の中で最年長のようだ
「土の騎士団長、ジュリウス、王女様を守りし盾になりましょう」
「「守りし盾になりましょう」」
皆が下がると、執事長セバスチャンと宰相ルーベルトが動きペルセフォネの前に跪く
「オフィールの未来にルフレの主ペルセフォネ様に」
「我等ルフレの導きを受けし者の感謝と忠義を捧げます」

ルーベルトの言葉で映像が消える
オフィールの民は歓喜に溢れ、ルイヒの者は王女と宰相なのだと思い知る
その中にも疑う者も居る。
嘘だ、偽りだ、何かの問題だ
(マハト)の扱えない、
アイツが王女の訳がない!
怒り、憎しみが溢れペルセフォネを受け入れないルイヒの子供達だった。

即位式が予定通り終わり、ペルセフォネとルーベルトはセバスチャンに誘導させられ出て行くと謁見の間がざわめく
「王女様と宰相様を見た?あんな神秘的なお姿」
「あのお髪、光輝いていて、姿は光なのにお髪は夜空のような」
「その逆に宰相様はお昼の様に眩しい太陽のようだ」
神秘的
六人の騎士団長は悲しそうに眺めてる
「どうしたキース」
一人の光の騎士が聞く
「何がだ」
「何か思い詰めた顔してるぞ、団長達全員が」
キースは彼を見る
彼はルフレに上がった際からの友人として、兄弟の様に過ごし、生活していたから、彼を誤魔化しは聞かないし、自分が団長となった時も補佐として副団長として務めてる
「まだ十歳のお子だ、親から引き離したから、心を開いてくれるか、心配なんだ」
ペルセフォネは愛犬ハニエルとペンダントが唯一の慰めになってるだろうが、ルーベルトには本当に何も無い。
それにペルセフォネとルーベルトは友人ではないし、ペルセフォネの友人が居そうには思えない
五年後ペルセフォネは女王になる
それまでに信頼を得てオフィールを守らないといけないのだ。

ペルセフォネはあの部屋に向かうとスーザンとアメリアが飾りを外しアーノルドはルーベルトを連れて行き、セバスチャンはペルセフォネの私室へ送り、スーザンに任せる

セバスチャンは息を吐き出す
長年主の居なかった城内、使用人達も神子達、騎士団も決まった仕事のみの執務
そして神官長からの手紙
皆を集める
「執事長」
「神官長からの連絡があり、明日、王女様と宰相様が来られます」
皆がセバスチャンを見る
「王女様、宰相様?」
「十歳の儀式で王女様と宰相様が現れました。
明日ルフレに来ます」
皆が驚く
「アーノルドと、ジェイソン、王女様と宰相様の執事に、スーザンとアメリアが使用人に」
セバスチャンが答える
自分は執事長として支える事にした
アーノルドとジェイソンは若いがお二人に近い為に、王女様と宰相様も安心するだろう
「いいえ、私は無理です
執事長が王女様の執事に、執事長は主人の執事ですから」
ジェイソンが言う
セバスチャンは固まる
自分は裏で支えようと考えた
確かに執事長は主人、王を支える執事
『セバスチャン、お前を執事長にする』
先代から言われた
神子にも騎士団にもなれなかった自分
『私は執|事長には』
『いや、お前だから執事長になれる
力をマハトを恐れるな、これはアルズ希望のお告げだセバスチャン』
お告げ
セバスチャンは(マハト)を恐れてる
セバスチャンの(マハト)はそれほど強く無い
騎士団や神子長より弱いだろう
しかし火の力マハトの為か威力が強過ぎて、コントロールが出来ず、自分や周りの者まで火傷をさせて、(マハト)を封じて生きて来た。
『セバスチャン、お前のマハトは、必ず主を守る』
先輩
「わかった、王女は私が務める
時間がない、各自王女様と宰相様の部屋の確認、警備、貴重品の確認」
「「はい」」
皆が動く
夜遅くまで働き、朝
「王女様は愛犬をお連れになる
大型犬で、足に怪我をしてる!」
「解りました、クッションの支度を」
音が鳴る
「来られた」
セバスチャンは左腕を掴む
ジュリウスとマリウスが来られた。
「王女様と宰相様が参りました、ご挨拶を」
「はい、参りましょう」
二人に付き従う四人
長年居なかった主、自分達の世代で会えるとは
そして入口で人目で見た自分達の主
愛犬に縋り、脅える子供
彼女が王女
彼女を見て理解した自分はこの子に、いやこの方に出会う為に生きて来たと
『セバスチャン、ルフレへ行け、それがお前の使命だ』
『頼んだぞ、セバスチャン』
貴女に忠誠を
「王女様の執務をサポートさせていただきます
執事のセバスチャンです」

即位式が終わり、飾りを外されていくペルセフォネを見て、スーザンに任せて離れる

たった三日
主の為に支度し、主を迎えて、主の即位式
それだけでルフレは活気付き、明るくなり、忙しく動き回る
自分もまた王の居ないルフレで務めを終えると思っていたのに
スーザンが出て来た
王女が休まれたのだろう
セバスチャンは右腕を掴み、痛みに堪える
「執事長」
「大丈夫、騒ぐな」
セバスチャンは放れ、傷薬を飲み息を吐き出す
責めて王女様が落ち着くまでは堪えないと
壁に寄りかかる
王女様を視てると全てが満たされ、この痛みすら薄れる。
スーザンはペルセフォネを休ませ、部屋を出ると柱に隠れ、痛みに堪えるセバスチャンを見る
セバスチャンは他者から一線を引く
それは使用人、執事達皆が知る事
昔、マハトの暴走で自分と先輩に火傷を負わせた。
その傷を一人で背負う彼
スーザンはセバスチャンに近寄る
「王女様がお疲れで休めました。」
「解りました、スーザンも休みなさい」
セバスチャンは料理人に頼み、軽食を持っていくとペルセフォネはルーフバルコニーのイスで眠っていた。
セバスチャンはペルセフォネをベッドに運び寝かせる。
セバスチャンは静かに立ち去る

ペルセフォネはスーザンが立ち去るとハニエルとルーフバルコニーに出て、イスに座り庭を眺める。
この部屋は何代のも王女が来て過ごされたのだろか?
そして五年後、女王となり、また別の部屋へ移動するのだろう
スピカが瞳を閉じると無の空間に男性が立っていた。
「貴方は」
男性はペルセフォネを見る
「君の前任者と言うべきかな、前王、二百年前の王だった」
前王、二百年前の王
ペルセフォネは男性を見る
二百年前の王が何故?
前王もまたペルセフォネを見る。
「王とはルフレに守られ、オフィールを守る、私が二百年このオフィールを守ってきた、新たな女王よ」
二百年前、オフィールを守ってきた前王
ペルセフォネは寝覚めるとベッドで眠っていた
かなりの時間が流れたのだろう、外は夕暮れ
体を起こすと軽食が置かれてあり、まだ温かい
『準備が良い』
ペルセフォネはテーブルに近寄り食事をする
『美味しい』

ルフレに来て二日目、ルーベルトは即位式が終わり、アーノルドにより私室に戻ると少しイスで休み、疲れがどっと来る
王を支えし宰相の存在、王の傍らに寄り添う自分
傍らに居たいと願う寄り添いと
「ペルセフォネ様」
彼女を呼ぶだけで、心が満たされる
星のような彼女の存在、淡い彼女に寄り添いたい
自分の部屋とペルセフォネ様の私室は放れてる
代々宰相はこう思って居たのだろうか?
それとも自分がスピカ様を求め過ぎてるのだろうか
ルーベルトは宰相としての王への感情に戸惑うのだった
ルフレの使用人達は昔から前任から言われ伝えられて居た
『即位式が終えた王子、王女に眠りの時間を、宰相に一人の時間を』
ルーベルトを見守りアーノルドとアメリアはそっと放れる
アーノルドとアメリアは宰相の執事と使用人になった事は自分達の誇りだ。
アーノルドとアメリアは親に捨てられ二人で支え生きて来た。
その中神子達により、執事、使用人になり暮らしてきた
セバスチャン、スーザン、ジェイソンなどに支えられ学び、地位を固めてきた。
ルフレに仕える者達は問題が多く皆が支える
家族や兄弟のように
アーノルドとアメリアに帰る場所が無い
やってきた宰相の執事と使用人になった

ペルセフォネはハニエルを連れて部屋を出てルーフバルコニーに階段があり、それを降りると庭に出て行く
夕暮れに輝く庭を眺めて歩む
即位式が終わり、挨拶を終えたジュリウスがペルセフォネを見付け、騎士団達を止め、自らペルセフォネの護衛する事にした。
王女として即位させたが、心も知識も幼い、明日から(マハト)の訓練が始まる
今まで(マハト)を扱ってこなかったから不安もあるに違いない
それに前王が居たのは二百年も前の事、見本となる存在が居ない

陽が沈む
ジュリウスがペルセフォネに近寄る
「王女様、部屋に戻りましょう」
ペルセフォネは肩を揺らし振り返るとジュリウスが居て一息する
「居たの?」
ペルセフォネは冷たく彼に言う
ジュリウスは儀式の時から居たから不安は抱かないが、警戒のあまり冷たく接してしまう
ルイヒの大人達とバカにしてきた同期達を思い出す
「はい、ルフレとはいえ、王女様に何かあれば大変ですから」
ジュリウスはペルセフォネに気付かい守るが為の行動
しかしペルセフォネにはそれは自分ではなく、『王女』を守る為としか思わない
二百年空白の王の地位
それに一番近いのは、一番相応しくない自分
だから彼等は守るし心配する
ペルセフォネは来た道を引き返す、その姿を悲しく見守る
「こちらに王女様」
ジュリウスはペルセフォネを気付かい、城内を歩き、ペルセフォネをある場所へ連れて行くとペルセフォネに見せる
花園が一望出来る場所
「花園が美しく見て居たいのは解りますが、王女様はまだ幼い、しかしここなら城内で、我々も気付けるので我慢してください」
ジュリウスは静かに言う
ペルセフォネの安全の為、ジュリウスは寄り添い守ってくれるのだろう
それでもペルセフォネはお礼を言わない

夜となり部屋へ戻り、ハニエルはクッションで休み、ペルセフォネは食事をして体を清め、慣れないベッドで眠りに付く
翌日、オフィールでは昨日の即位式の映像も観た上で新たな王と宰相に喜びまつり騒ぎだ。
前王崩御から二百年、小さき町、ルイヒ出身ペルセフォネ王女、宰相ルーベルト
二人の即位式の姿が映し出されてる
乙女座の女神の王女と太陽に守られた宰相と伝えられた
「ルフレの主、ペルセフォネ王女」
男はそう口にして立ち去る

ルフレにてスピカとルーベルトは、セバスチャン、アーノルド、スーザン、キースにより城内を案内され、昨日使った謁見の間の他に会議室、王の間、宰相の間は入口のみの案内だ。
王と宰相の間はペルセフォネとルーベルト本人しか入れないのだ。
他にパーティ会場、騎士団の訓練場、馬小屋、庭に神子長や団長達の部屋も案内された。
案内が終わり、少し休み、ペルセフォネは神子長、騎士団長と訓練場に集まる
神子長はペルセフォネの教育の為、ルフレに居る許可が下りてる。
(マハト)の訓練と王女と宰相の勉学の教師なのだ。
そして隣室ではルーベルト、(セェーン)、キースが光の(マハト)の訓練を行う事になってる。
五人の神官長は、今まで扱えてない子供にどう教えるか、思案し四人は(アクア)を見る
四人の視線を感じ、逃げは許されない
五人の視線の攻防し、(アクア)が負け、意を決しペルセフォネに近寄る
ペルセフォネの(マハト)が駄々漏れで騎士団長達はペルセフォネの(マハト)に戸惑い落ち着かない
「ペルセフォネ様、まず集中してください、そうですね……ルイヒの好きな場所を思い浮かべてください」
ペルセフォネは(アクア)の言葉に目を瞑り、ルイヒの丘、町やルフレを見ていた丘を思い出す。
すると駄々漏れだった(マハト)が抑えていく
「そのままをイメージしてください」
マハト
マハトは力、力は
そう思うと風が吹く
ペルセフォネの髪が白髪になり風が舞う
騎士団長、神子長も驚く
(マハト)を発動すると髪の色が変化したのだから
「え?」
ペルセフォネが驚き目を開くと髪は黒髪に戻り風が止む
「風の(マハト)です
ペルセフォネ様の場合、(マハト)を求め、六つの(マハト)がぶつかり合い、(マハト)を表に出せなかったのでしょう
一つ一つのマハトの自覚を持ちコントロールすれば扱えましょう」
(アクア)の言葉に(マハト)があると実感するが、まだ不慣れである。
しかし自分に(マハト)がある事が何よりも嬉しい
ペルセフォネの小さな微笑みに安堵する十人
ゆっくり彼女のペースで(マハト)を扱える事、今はそれだけ、そして王女としての教育は(ファス)と、(マルス)が中心に行う
王女としての重荷だろうが、サポートしていけば自立して行くだろう
城ルフレの主、国オフィールの王、生まれ持った宿命
人との触れ合いが不慣れだが、勉学、(マハト)のコントロールに取り組む

朝、夕方、夜の散歩も欠かさず、ジュリウス、フランツが隠れて護衛してる事が殆どだ
ルーベルトも訓練し勉学に励む
(マハト)は独自で練習していた為、細やかなコントロールが出来てない。
毎日コントロールと勉学に励む
互いが真逆
主の為に学ぶルーベルト、主として戸惑い愛犬と居る事を望むペルセフォネ

ペルセフォネは花園の一部を見る
小さな花で溢れてる花園、その中に七色の薔薇がある。
一枚一枚の花弁の色が異なるレインボー・ローズ、七色の薔薇、これを見ると両親を思い出す。
「お父さん、お母さん、寂しくって辛い、でもね、オフィールが大好きだから、お父さん達が大好きだから頑張るよ」
七色のレインボー・ローズが輝く

夜、寝静まったルフレ、ペルセフォネも漸く慣れたベッドで眠る。
男はルーフバルコニーからペルセフォネの寝室に入り、ペルセフォネに近寄るとハニエルが唸る。
男はハニエルを払う
「グウゥ」
「ハニエル!!」
ペルセフォネはハニエルの唸りで寝覚め、男とハニエルを見て声を上げる
見知らぬ男
ペルセフォネはルフレに居る男性の顔は覚えてない、しかし六騎士団長やセバスチャンにより紹介された人は覚えようとしてるし、何よりハニエルが唸ってる
ペルセフォネは呼び鈴を掴むと男に投げ付け部屋から飛び出す
「王女様!!」

騎士団長の姿にセバスチャンが来て、男は逃げ出す
夜の見回りに、見張りの交代に支障があり、確認していたらペルセフォネの部屋から物音がし、セバスチャンと鉢合わせして向かう
セバスチャンはペルセフォネを抱きしめ、六人は男を追い、捕らえるが男は自害してしまった。
「オフィールに災いが降りかかる」
そう言い残して

騎士団長は集まる
「王女様は」
キースが聞く
「セバスチャンとハニエルにより落ち着いてる」
ハワードが答える
災い、オフィールに二百年が立ちようやく新たな王女を迎えた、災いなど有り得ない。
しかしジュリウスはあることを思い出した
「五年間」
「ジュリウス?」
アベルがジュリウスを見る
「即位して五年は気を抜くな、そう伝えられた」
五年、それは成人の儀と二度目の成人の儀の期間

ペルセフォネはハニエルを抱き震えてる
『ペルセフォネ様、貴女は王女になるべきではなかった、このルフレは監獄でしかないのです、王とは名ばかりのオフィールの犠牲者でしかない!!』
あの男の言葉
オフィールの犠牲者、ルフレが監獄、それはどういう意味なの?
「王女様、スーザンより作らせましたホットミルクです、お飲みください」
ペルセフォネはゆっくりホットミルクを飲み、セバスチャンに寄りかかり眠る
セバスチャンは幼児のようにあやしてベッドへ寝かせ見守る。
朝起きるとスーザンの姿があった。