オフィール、城ルフレにして一人の男性が一つの掲示をみていた。
『小さな町にして光の幼子をルフレにお迎えせよ』
この掲示は昔から様々な事を予言し、オフィールの未来を示す
神子の審判で使われる六つの石が十年間、輝き続け、今年は十年間で最も強い、男性は掲示と石を交互に見るしかない。
今年一つの町にルフレに迎えるべき子供が現れる
男性は輝く石をトレイに乗せ、部屋から出る。
男性が向かう場所はルフレに仕える六人の騎士団長のもとだ
木漏れ陽が差す室内で六人の青年が体を休めてる
光の騎士団長(総団長)キース
闇の騎士団長(副団長)ハワード
火の騎士団長アベル
水の騎士団長マリウス
風の騎士団長フラン
土の騎士団長ジュリウス
木面でシンプルな室内
大きな窓、ゆったりとしたソファに、整理された本棚にベッドが三台あり、騎士団長達の最適な休憩室だ。
プラチナブロンドの軽い癖毛の長髪の金の瞳のキースは窓の側に立ち庭を眺めてる
長年王が居ないこの城ルフレを守り務める使命の騎士団長
(このオフィール国は二百年もの間、王が居ない
自分達の世代も王の居ない世代になるのだろうか?)
キースは王に仕えたい、そう願い、庭を眺めてる
黒色のふんわりとした長髪に肩下に紺色リボンを結ぶ紺色の瞳のハワードはゆったりとソファに座り休んでる。
(警備に訓練、王の居ない城ルフレで、国オフィールの為に、務める、いずれ現る王の為に)
ハワードの隣で座り眠り転ける短い髪を上に尖らせた形の赤毛のアベル
水色の髪の三編みした淡い緑の瞳のマリウスは置かれてる水槽のメダカを眺めてる
(私達はこのメダカと同じ、水槽、この国以外知らない
出身地以外知らないし、出たいとも思わない、しかしここ、ルフレには憧れを抱く)
白髪で短髪で銀色の目をしてるフランツは一人用のイスに座り、ボーと天井を視てる
茶髪のダークブラウンの瞳のジュリウスは壁に寄りかかり本を読む
イスはあるが、本棚から動きたくなく、イスを移動も面倒の為、皆は放置した。
いつもと代わらぬ、静かな休憩時間
ルフレを守り、オフィールを守るが使命、しかし今、このルフレに王は居ない
王が居ればこんなのんびりと過ごす事は出来ないだろう
六人の休憩室にノック音がなり、ハワード、アベルが起き、ジュリウスがドアを開けると、あの男性が入ってきた。
六人は男性を見て、キースが聞く
「何かありましたか神官長様」
神官長 神子達の長の立場で、オフィールの神子達をまとめあげる存在だ
神子が彼に逆らえば、謀反とみなされる程
しかしプレッシャーからなって早々辞める者も多い、魔の役職
しかし彼は元ソンブルであった為か、ここ数年、彼が最年長で居続けるが、後継者が居なく、辞められないのも事実
「今月の儀式はオフィールで最も小さい村と言われてる、ルイヒですよね?」
神官長の言葉に六人は肯定する
「そうです、あの町は東北の小さなフロースとも言われてる町だそうです」
フランツが答える
神官長は六人を見る
「今月の儀式は、私もご一緒致します。」
六人は神官長の言葉に驚き、六人は互いに見合わせる
月に一度、町では年に一度の儀式
それを神官長直々に行う事は、これまでにない事、昔、王が居た時はあっただろうが
しかも首都や町でなく、オフィールで最も小さい村だ
「構いませんが、何故です」
キースが聞く
騎士団の総団長として、神官長の護衛も任務に追加せねばならない
「今回の儀式で、私達が捜し求める者が、現れるような気がしますし、掲示がありました。」
掲示
オフィールの未来に導く掲示のお告げ
それを騎士達に任せず、神官長自ら行く事も初めてだろう
神官長は掲示を見て、それを伝えるが務め
神官長は代々、誰かを捜してる
それが今回の儀式のルイヒに居るのかもしれない
騎士達は見る
神官長が持つ六つの石が輝いてる
これを意味する事を知った時、騎士達はどう思ったのだろう?
緑輝く野原にルフレを眺める黒髪の少女
ルイヒでペルセフォネは一人空を眺めてる
十歳の誕生日が、儀式当日である
母がその日を楽しみに儀式の服を作ってる。
儀式の衣装は代々、母が子に作り着せ、母が居ない子にはシスターが作り着せるのが習わしだ。
神子に選ばれば神子見習いとして特別待遇を約束され、力のコントロールも学べる
しかしペルセフォネは産まれ持つべき力がないのだ。
その為同じくらいの子供達にいじめられ、小さな町の為、皆がペルセフォネが力を扱えない事を知ってる。
ペルセフォネの両親もルイヒの中では有名な力使い手の為、ペルセフォネの期待も強かったが、ペルセフォネに力の兆候は視えない。
ルフレにお声が掛かる程のマハト使いと、マハトのない子供
二人は静かに暮らす為にルイヒで生活を望んだが、無理に城ルフレに行き、ヴィーゼで過ごす 事にすればよかったかと、後悔してる。
マハトが強い子は赤子からマハトの光に包まれ、弱い者も、七歳当たりでマハトが発動する
しかしペルセフォネは九歳で、もうじき十歳でマハトを覚醒してない。
しかし両親も大人達もペルセフォネのマハトは闇だと解ってる
マハトの力は髪で解る
火のマハト使いは赤の系列の髪
風のマハト使いは白髪
水のマハト使いは青の系列の髪
土のマハト使いは茶色の系列の髪
光のマハト使いは金髪かプラチナブロンド系列
闇のマハト使いは黒髪
一目で解る
その為、ペルセフォネは闇のマハト使いのはず
しかしルイヒに闇のマハト使いは居ないし、力の覚醒が見られない。
両親も闇使いと誇りに思い、ペルセフォネに愛情を注ぐ
幸せの筈なのに、ペルセフォネは苦痛で圧し潰されていた。
大人達はペルセフォネを見付けると声をかけてくる
「成長すれば力が扱える」
「ペルセフォネのマハトが弱いから扱えないだけ」
「闇のマハトは貴重だから」
そう言われ続けて来た
その言葉が重荷で苦痛である事など大人達が気付く事はない。
それから逃げてペルセフォネは一人で半日過ごすのだ。
静かで花や風が舞う丘で城ルフレを視てる日々
家族は好きだ、愛してくれてる、大事にしてくれてる
ルイヒも好きだ
それなのに一緒に居る事が苦痛でしかない
父は風のマハト使い、母は土のマハト使い
二人はルイヒの神子として務めた経緯もある。
そんな両親を持つペルセフォネは力を持たない
その重荷から解放される
この丘で空を城ルフレを眺めてる事が唯一の安らぎになるのだ。
「希望よ、私は何の為に産まれ、生きるのですか?」
ペルセフォネの言葉に答えてくれる者は居ない
夕方ペルセフォネは家に、帰ると愛犬、イングリッシュグレイトハウンドのハニエルがペルセフォネに駆け寄り甘える
ハニエルと居る時が幸せな時間、ハニエルだけがペルセフォネを笑わせる事が出来る。
それでも今のペルセフォネは喜べなかった
今年の誕生日が怖い、その日、マハトの石はペルセフォネに何を、もたらすのか、恐れてる。
力無く生活するのか、闇のマハト使いとしてウィーゼに向かう事になるのか、不安が消えない。
誰もが通る通過儀礼なのに自分だけが、それに脅えてる
誕生日なんか、来ないでほしい
少年はペルセフォネを見る
自分は一人だった
生まれてから強い光のマハトに包まれて育った自分
四元素が当たり前の小さな町ルイヒの中で唯一の光を持つ自分
そして同じく、唯一の闇のマハトで産まれながら、マハトを覚醒出来てない彼女ペルセフォネ
自分達はまるで陰陽の存在と考えてる
闇のマハトもルイヒでは稀なのに覚醒出来てない事で孤独な彼女
産まれながらマハトに包まれて育った期待されてる自分
自分と彼女は神子に選ばれたら自分達は大きな町に行く事になるだろう
ルイヒでは光と闇のマハトを持つ者が居ないから
ペルセフォネ
ルイヒで知らぬ者が居ない、自分もまた
自分はペルセフォネの傍に居たい、陰陽か、ルイヒの唯一の闇の存在が解らない
しかし母はペルセフォネと居る事を禁じた
自分と彼女は唯一なのに、自分は特別だからと引き離す
苦しい、辛い
彼女の傍が自分の安らぎだと言うのに誰も解ってくれない
息子ルーベルトはずっとあのペルセフォネを視てる
最初はルーベルトと同じ、ルイヒの唯一の存在と期待したが、彼女はマハトの覚醒がない
いつしか影で口にする
呪われた娘と
私はルーベルトを呪われた娘から離そうとするが、ルーベルトは無意識にペルセフォネを捜してはずっと視てるのだ
突き放すとルーベルトは笑わず、何の興味も示さない
彼女だけが生き甲斐のように
意味が解らない
どうせ彼女は神子に選ばれない
マハトのない、オフィールの呪われた娘なんだから
ペルセフォネの誕生日前日、ルフレから騎士団が来た
騎士団は本来、神子見習いの施設に身を置くがルイヒは小さい為、その施設ではなく、教会で体を休める
騎士団長六人はルイヒに入ってから落ち着かず、何かを捜す
ルイヒの人々は祭り騒ぎで祭壇を創り上げる
ペルセフォネの父も手伝いをし、ペルセフォネは家から放れた広間を視てる
六人は与えられ部屋でイスに体を預ける
皆がそれぞれのマハトの力量に酔っているのだ
(気持ち悪い、なんだこの光のマハトの力量は、強い、自分より強い光を持つ者が居て嬉しいが、辛い)
(このルイヒにこれほどの闇のマハトが扱う者が居るとは聞いてない、神子達は何を、してる!
解らないのか、この闇のマハトを)
(熱い、熱い、なんだよこの火のマハトは、強過ぎだろう!
コントロール出来てないから、子供か、でも大人達が気付くだろう、これほど強いマハトを、バカか、ルイヒの奴等は)
(激しい風が吹き荒れてる
停まることの無い激しい風、何故ルイヒの人々は平然と過ごしてる、気持ち悪い)
(激しい水の流れ、止める事も弛める事もない
こんなに激しい水は知らない、ああ溺れそう)
(気持ち悪い、地面が激しく揺れ、立つのも出来ない
誰が揺らしてるこの土のマハトを、気になる)
騎士達は心配する
「あの神官長様、団長達は」
「解ってます、ルイヒに居る誰かのマハトに酔ってるんですね
彼等はかなり繊細ですから、自分より強いマハトに当てられると酔うのです」
「え、団長達より強いマハト?」
騎士達が驚くのも無理は無い
騎士は第ニの儀式で望めばなれるが、団長になるのは二つあり、どちらも難しいのだ。
一つは団長引退で、団長、神官長、神子長の推薦で団長になるもの
これはフランツ、マリウス、ジュリウスが得たもの
そしてキース、ハワード、アベルは試験で団長に選ばれた者
試験は、筆記、武芸、闘技、体力とある
そして両方とも欠かせないものがある
マハトの力量だ
彼等はルフレの中で一番強いマハトの力量を持つ騎士(神子達を除く)になる。
だからその彼等がマハト酔いで驚いてる
(騎士団長が酔うマハトって、どれだけだよ
なんで自分達は解らないんだ?)
マハトの石が強く輝く
広間に祭壇が出来て、村人は帰って行く
そして明日を待つのだ。
年に一度、子供の成長の為の儀式
ルーベルトの母はルーベルトを甘やかす
明日、選ばれたら離れ離れになる、それなのにルーベルトはずっとペルセフォネの家の方角を視てる
何でよ、何で、あんな呪われた子ばっかり見るの!
ペルセフォネの家でも両親がペルセフォネに寄り添う
そしてルイヒに静寂な夜の帳がおりる
団長達もやっとマハトの強さから解放され、体を休める。
朝、小鳥達の鳴き声で起きる。
まだ、あの強大なマハトは無い
六人は安心する
しかし暫くしてまたマハト酔いが始まった。
やはり誰かが起きるとマハトが放出される
「しかしこのルイヒに六人もマハトが強い子が居るなら楽しみですね」
確かにそうだが、強すぎる
ペルセフォネは起きてハニエルを見て触れカレンダーを見る
自分の誕生日が来てしまった。
ペルセフォネはハニエルと部屋から抜け出し、目にするは母が作ってくれた儀式の衣装が置かれてあり、重い溜め息を吐く
逃れられない儀式が誕生日なんて
ペルセフォネは諦め、その衣装に着替え、支度をし、ダイニングへ向かうと母がペルセフォネをイスに座らせ、髪を梳かす
『永遠の別れ』
「え?」
「どうしたのペルセフォネ」
母は聞こえてない
「何でもない」
(今、確かに男の声を聞いた、『永遠の別れ』ってどう意味?)
母がペルセフォネの黒く長い髪を優しく梳かす
ペルセフォネは母の嬉しそうな笑顔が苦しく目を背ける。
「ペルセフォネ、私は幸せよ、貴女が儀式の日に産まれた事に」
それが母の喜び
しかしペルセフォネは自分の誕生日が苦痛で仕方がない
父が来て、母とペルセフォネの頬にキスをする。
「ああ、ペルセフォネ、私達の娘、これで君も大人の第一歩だ」
「お父さん」
朝食となり、今日はペルセフォネの誕生日の為、朝食はペルセフォネの好物だが、今日は嬉しくない
儀式は十時からの為、九時から母がせっせと準備をする。
髪を後ろに纏め、フードのようなベールを被せる
女にはベールを被せるが習わしである
九時半となり、ペルセフォネの家は町の外れずにある為、早めに出る。
広場に近付くと村人が挨拶してくる。
「ようやく成人ね」
「おめでとう」
そんな言葉にペルセフォネは答える勇気すら無い
同期達もペルセフォネを嘲笑う
騎士団長の六人は祭壇に来る
違和感しかない、こんな強大なマハトに当てられ、何故ルイヒの人々は平然と過ごしてる?
麻痺してるのか、当たり前過ぎて
時間が差し迫る
騎士団長と神官長は祭壇に上がる。
祭壇の下には誕生日順に並ぶ儀式の服を着た子供達が、横並びで座ってる。
ペルセフォネは本日が誕生日の為、一番最後だ
その中にペルセフォネをずっと見ているルーベルトも居る。
六人は祭壇の上から今から儀式を行う子供達と見守る大人達を視る
子供達も大人達も期待が凄い、が六人は二人の子供を視る
「神子長、民の期待が凄いが」
「えぇ、今年度の子等はマハトの力量が多く、それに特別な子が一人居ますから」
アベルが聞いてルイヒの神子長が笑顔で答える。
その力量の子等がこのマハトの正体か、
今にも圧し潰されそうな巨大なマハト
その時、鐘がなる、時間だ
神子達が騎士団長にそれぞれ、光、闇、火、風、水、土のマハト石を持ち子を待つ
そして神子が一人子を祭壇に上げさせ、座らせる
しかし石は反応せず、否定する
神子に相応しく無い
しかし殆どの子供は神子見習いになれず、両親、兄、姉に泣き付く
そしてペルセフォネをバカにし、自信に溢れた火のマハトの子も神子になれなかった。
期待されてた子が神子見習いになれない
神子長も不安になる
村人もざわつく
儀式を受けた子達も神子見習いになれると思っていた
ペルセフォネをバカにしてきた子達も
何で何で神子に選ばない!
六人は見てる
期待されていた子達が神子見習いに選ばれない
しかも儀式が始まり、半分以上参加し一人も神子の認可が降りない。
ジュリウスが見る
「マハトの共鳴」
マリウスが理解する
「なるほど、マハトの強い子の側に居て、その子の強大なマハトに当てられ、少ないマハトが巨大に強いと思い込む共鳴マハト」
騎士団達は頷く
やはり次から次に連れられても神子に相応しい子は居ない
子供達も共鳴マハトを知ってる
親から習うのが共鳴マハトだ
親子が同じマハトなら、親のマハトにより親より強いマハトを取り込む
しかし両親の場合だ
他人なら影響を受けるだけで取り込めない
(誰だよ、俺達より強い、共鳴マハトを引き起こす程のマハト使いは!)
そしてルーベルトが呼ばれ祭壇に上がる
その時、キースの持つ光のマハト石が強く輝く
(ああ、ルーベルトか、ルーベルトは産まれながらの特別だから)
(強すぎる!呑まれる!)
キースはなんとか堪える
神官長がキースとルーベルトの間に入り、マハトが緩まり、キースは呼吸を整える
ルイヒの神子長は驚き見てるしか出来ない
「君のマハトは強い、光の騎士団長が呑まれる程、しかしそのマハトは偽りの巨大さのようだ、君は必死に守っておいでだ」
神官長の言葉にルイヒの村人は理解出来てない
彼もまた共鳴マハトというの、何を守ってるというの
「君の名は?」
ルーベルトは神官長を見る
「ルーベルト」
すると神官長は満足そうに頷く
「光の団長、アルズ様の意思を」
キースは跪く
「静かなるルーベルト、オフィール国、ルフレの主、王女、ペルセフォネ様を守りし事感謝する
貴方は宰相とし貴方の対、王女ペルセフォネ様とルフレにお連れし、宰相、王女の知識を学ぶ事を告げる」
キースがアルズのお告げを口にし、村人はざわめく
宰相
その事に驚きに溢れるが、光の団長が言った
王女ペルセフォネ様
ルーベルトはペルセフォネを守っていた。
ルーベルトの母は見開く
息子が宰相で誇りに思うが、王女を守る者
その王女が、あの呪われた子
光と闇のマハト
どんなに突き放しても、求める者、彼女しかルーベルトは笑わない程に
あの呪われた子がルフレの主、オフィールの王女
有り得ない、嘘だ!
アイツはマハトに捨てられた奴だ!
王女のはず、王家の筈がない!
でたらめだ
ペルセフォネの両親はペルセフォネを見る
娘がオフィール、ルフレの王女
マハトの覚醒もしてない娘が王女
「王は代々、マハトが強過ぎ、封印され宰相により守られた存在」
神官長が言う
神官長は祭壇から降りて、ペルセフォネの前に立つ
神官長は迷い無くペルセフォネの前で、止まり、ペルセフォネに手を差し伸べる
ペルセフォネは戸惑い、神官長を見て手を掴み、祭壇に歩むとマハト石が強く輝く
しかも一つではなく六つ全てだ。
「王のみ、六つのマハトがあります、このマハト石は貴女のマハトです。」
私のマハト?
「王のマハトは巨大な為、王とマハトを分けます
このマハト石は二百年、貴女様を待っていた」
二百年
それは王の居ない期間
「しかし十年前からこのマハトは輝き出した、貴女が生まれてから、このマハトは輝きが収まらない」
ペルセフォネは自分の周りに浮くマハト石を見る
村人は驚愕する
マハト石を知らない訳ではない
しかしそれは儀式で神子見習いを探し出す石の知識が無い
あれが王のマハトだなんて、思いもしなかった。
あのマハト石はかなりの大きさだから
ありえない、アイツが王のはずが無い
アイツは闇のマハトを覚醒出来ない、落ちこぼれの奴なんだから!
ペルセフォネをバカにしていた、火の少年が、マハトで攻撃するとマハト石が暴走し、ペルセフォネを囲み、火のマハトが少年に攻撃する
「しまった、マハトの暴走だ!」
巨大過ぎるマハト
殆どの者はマハト酔いする
これはルイヒに入ってから感じていた巨大なマハト
彼女の王のマハトだった
なんだよ、マハト石はルフレの唯一の物、それで神子に選ばれる
それが王のマハトで、アイツのマハト
強過ぎるマハトの暴走
しかしそれを抑え込む者はマハトの覚醒してない娘
六人は巨大なマハトに堪える
「このくらい、昨日よりマシだな」
昨日より
「抑えられるかい」
「無理だろう、巨大過ぎる」
これを収めるは一人だけ
キースが寄り添い、膝を付く
「ペルセフォネ様、深呼吸を、私達がサポートします
マハトをおさめるんです、良いですね?」
ペルセフォネは頷く
「光のマハトは照らす力マハトです
なら光を消しましょう、ランプの灯りを消す様に、焦らず、落ち着いて」
光のマハトがおさまって行く
光のマハトがおさまり、石に戻る
キースが石を持ち、離れる
そしてハワードがペルセフォネに近寄り膝をつく
「次は闇のマハトをおさめます
闇のマハトは包み、そして覆うマハトです」
ペルセフォネは理解し頷く
彼に従う
「闇のマハトを布や、リボンと思ってください、それを解く様に、丁寧に解いてください」
「見つからない」
「大丈夫、闇のマハトはペルセフォネ様を守る様に包んでるんですよ」
包んでる?
探る
「見付けた」
「はい、それを解いていきましょう」
ペルセフォネは今日が誕生日と思い出し、プレゼントを開ける様に開いて、闇のマハトは石に戻る。
ハワードが受け取り、放れアベルが来る
「次は火を抑えましょう」
アベルは見る
(かなり疲れてる、無理も無い、光も闇も巨大過ぎるから、しかも十歳の娘)
「火のマハトは光に似てる、そして燃やす、ならその火を消しましょう、蝋燭の火を消す様に」
ゆっくりと消していき、火のマハトは石となす
アベルは石を持ち、フランツがマリウスが近寄る
疲れきり、座り込むペルセフォネ
かなりの疲弊に助けたいが自分達はアドバイスをするしか出来ない。
「水のマハトは水流です
その水流を緩やかにし止めてください」
ゆっくり緩めて止めていく
しかしペルセフォネは疲れきり、荒い呼吸をする
マリウスは水の石を取り、放れる
あとは風と土のマハトが残ってる。
フランツが寄り添う
「風は自分を守るもの、そして刃のもの、刃を緩めてください」
主を守ろうとするマハト
それを止めていくペルセフォネ
ペルセフォネが横たわり、ジュリウスが支える。
あとは土のマハトだけの為、ジュリウスが支える事が出来た。
「土のマハトは守るマハト、そして壁となるマハト、ゆっくり壁を壊してください」
壊す
マハトがおさまるとジュリウスはペルセフォネを抱き上げ、ルーベルトも抱き上げ、馬車に乗せて行く
マハト酔いする村人達を無視し、ペルセフォネを連れて行く
両親は連れ去るペルセフォネを視る
ペルセフォネがルフレへ行ってしまう
誕生日プレゼント、料理も用意したのに、まだ娘に朝食しか食べさせてない
ペルセフォネはあんまり我儘を言わない、だから一つの贈り物を与えようと考えていた。
「ペルセフォネ!」
父親が叫ぶ
しかしペルセフォネは馬車の中で横たわってる。
ルーベルトの母もルーベルトを求めるが、激しいマハト酔いで動けない
ルーベルトはペルセフォネを心配し、母を見ない
ペルセフォネはマハトの暴走で意識が無い
馬車の中はペルセフォネ、ルーベルト、神官長の三人だけ
馬車と騎士団の馬はルイヒから出れば追う者が居ない
だいたい、オフィールの民は何を恐れるのか、村、町から出る事を恐れてる
町を行き来するは、ルフレに仕える騎士団くらいだろう
ルフレに憧れを懐き、町を出るのを拒む
だから追う者は居ない
三人の乗る馬車には御者、馬が居ない
騎士団の馬が動くと連動するシステムになっており、前にキース、ハワード、馬車の右にアベル、左にマリウス、後ろにフランツとジュリウス、その後ろに騎士立ちが居る
ペルセフォネは眠ってるが視ていた
両親の最後の姿を、自分を呼ぶ父を
両親、愛犬ハニエル、大事にしてきた宝物が全て置き去り
『永遠の別れ』
あの言葉の意味は、この事、誰からのメッセージ
ペルセフォネはそう考えた。
オフィールの王女、しかし自分は「マハト」の使えない、子供でしかない
涙を落とす
ルーベルトは眠るペルセフォネを視る
母や村よりもペルセフォネが心配でならなかった。
「マハト」が無くともいいじゃんと考えた事もある、彼女が一人で居ると近くに寄り添いたいと願ったが、母が許してくれなかった。
「人目があるから」
「貴方はルイヒで唯一の光の使い手」
ペルセフォネも唯一の闇の使い手だ
ただ覚醒してないだけで、それなのに誰も、スピカを見ようと、手を差し伸べようとしなかった
そして、今日、彼女が王女で、自分が宰相と言われた。
言われてすんなり、納得する自分が居る
そして彼女が大切な存在だが、好意は無い
自分が王女の従者、それが自分の全て
ルーベルトの母は夫を亡くし、息子がルイヒ唯一の光の使い手として大切に育てた
ルーベルト自身も優れていた。
しかし彼はずっと「マハト」の無いスピカを視ていた。
自分はペルセフォネがルーベルトの妨げになると思って、触れ合いを禁じたと言うのに
王女と宰相
ルーベルトは無意識に主である王女を求めていた。
ルーベルトの母は崩れて泣いた。
ペルセフォネの両親は村の人々に見守られながら、静かに家に帰ると母が泣き崩れる。
ペルセフォネは一人っ子故に甘やかしても、しっかりした娘だった。
我儘は言うが滅多なことでは口にしない、大人しい娘だった。
母が妊娠した時、ペルセフォネは物凄く喜んだ、しかし赤子は死産となった。
生まれてべき妹をエーリゴエと呼び哀しんだ。
「私達は姉妹よ、ずっとね」
そう言って泣いた娘
そんなある日、父が拾って来た犬を連れ帰り、ペルセフォネはハニエルと名付け、体を労り、面倒をみて育てた。
そのハニエルは両親の帰りを見るなり、何かを咥えて家から飛び出した。
「ハニエル!」
父がハニエルを呼ぶが戻らない
見てみると娘のプレゼントの一つがない。
(ハニエルが、ペルセフォネに渡すのか、あのプレゼントを)
六人は馬車に乗ってる、神官長、ペルセフォネ、ルーベルトが気になってしょうがない
親に大切に育てられた二人の子供
ペルセフォネとルーベルトが待ち望んだ、二つの巨大な力の君主と宰相
二つの座は長く空いていた
オフィールの王が十歳の娘に決められた、その補佐もまた
六人の騎士も十歳で神子見習いになったものの、十五の儀で騎士団に入隊する事を望んだ、もしくは導かれた。
王とはいえ、彼女も、彼も二人はまだ幼く、十歳で全てを決められ、荷が重く、どうすればいいか分からないだろう
王女、宰相となれば、成人の儀を迎えても、王女は女王へ、宰相はそのまま宰相
生涯ルフレに捕らわれる事は紛れもない事実
二人を守り、二人を支えなければ、両親から引放してしまったのだから
二人の荷物は何もなく、服は儀式の礼服、しきたりに文句をつけたいものだ。
『王、ルフレの関係者は見つけ次第、ルフレにお連れしろ』
ペルセフォネは目を覚まし、同乗者の神官長やルーベルトを見ないで、外を眺める
オフィールのどこからでも視えると言われる城『ルフレ』
ルフレ城の行き方は限られた人しか知らないと言われてる寝さき屋や、神聖なる聖地、幻想的な城
ルフレ城に一番近い町は首都の草原のウィーゼであるが、ウィーゼの住民もルフレ城の行き方を知らない。
(もう二度と両親にもハニエルにも会えない、エーリゴエの墓参りも行けない)
ペルセフォネは落ち込む
神官長はペルセフォネとルーベルトを見守る事しか出来ない
オフィール、ルフレの主人と主人を支えし者を見付けたのは嬉しいが、まだ十歳の子供にすぎない。
家族も何もかも引き離して、連れ出して来たのだから
(どうか私を許さないでください)
神官長は時間を確認し外に居るマリウスに伝えると馬車が野原に停める。
「王女様、宰相様、昼食に致しましょう」
神官長のその言葉にペルセフォネ昼と理解する
儀式は十時から始まり、殆どの同期は共鳴マハトで神子見習いに選ばれず、彼が宰相にそして、自分が王女に
マハトの暴走、収まるとすぐ馬車に、長い時間を感じたのに、まだ昼
扉が開きキースがペルセフォネとルーベルトを馬車から降ろす
ペルセフォネは馬車から降りると来た道を視るがルイヒは視えない
ルイヒで産まれ、育った。
小さな町、友と言う友は居なかった
それでもルイヒが大好きだった。
ルイヒしか知らないから、かもしれないが、オフィールは国事態はそうでも無いが、町が十二しかなく、その間がかなり離れてるせいでもある。
人々は町から滅多な事で、町から出ようとしない、他の町からも滅多に人々が来る事もない
キースは二人をシートに座らせ、昼食の用意をする
騎士団達の荷物用の馬車も有り、二人が増えても問題はない
簡単であるがすぐ用意すると二人は静かに食べる。
騎士達も心配で二人を見る
ペルセフォネは神官長や騎士に心を閉ざしてる
ルーベルトは心を閉ざしては無いが話そうともしない
静かな昼食時間
ペルセフォネは料理を見て、母が用意した料理は何だったのだろうと考える
今日は私の十歳の誕生日
フランツがペルセフォネツに声をかけようとするとジュリウスがフランを止める
「辞めろフランツ、まだ宰相様は大丈夫だが、王女様の心の整理が付いてないし、時間も必要だ。」
整理と時間、そして自分達の信頼
自分も騎士として孤立し、彼女もまた孤立してる。
この六人での団長も日が浅い、ハワードが一番古く、アベルと自分ジュリウス、マリウスが新参者に入る
しかしハイデ出身の為、観察眼と、人の心理観察は五人に認められてる
だからフランツを止められる
それに下手すれば彼女に信頼されず、警戒され、信頼しろと言えば警戒を強まるだけ
王女が心を開き、自ら自分達に近寄らないと何も意味をなさない事も知ってる
ジュリウスの言葉を理解し五人の騎士と神官長は静かに彼女の名前を胸に呟く
『ペルセフォネ様』
ルーベルトはペルセフォネを見る
彼女の支えになりたいと思ってるが彼女は愛犬と、両親しか許してない
そうさせたのはルイヒの民達
だから自分が宰相として学び、サポートする
昼食が終わり騎士達が片付けをし、神官長がペルセフォネとルーベルトを馬車に乗せ出発する。
夕刻、ルイヒに一番近い、夜の町と呼ばれてるウフィクに入り、騎士団の宿へ向かう
この宿は闇の騎士団長ハワードの実家にあたる
ペルセフォネは一つの部屋を用意された。
一人の時間、ペルセフォネは両親とハニエルを思い考える
ハニエルは大人しく親の言う事を聞いてるだろか?
母は泣いてないだろうか?
父は酒に溺れてないだろうか?
ハニエルをモフモフしたい、毛は短いけど、父さんと母さんと過ごしたい、エーリゴエの墓参りも行きたい、寂しいよ
ハニエルは休みなくプレゼントを咥えながら走り続けていた。
主人であるペルセフォネにプレゼントを渡す為に
ルイヒに居るペルセフォネの母はベッドに横たわり、外を眺めてる
父もソファに座り、酒の入ったグラスを揺らし眺めていた。
朝、ペルセフォネは不安に溢れ儀式を恐れていた
マハトがないから、覚醒してないから泣いていた。
それが王の存在とは思いしなかった。
娘にあげるはずだった服、喜んだであろうプレゼントを渡せずに娘の部屋においた。
ハニエルが持っていたアレを除いて
『オフィールの神よ、何故娘なのですか、アルズよ』
ペルセフォネの両親は涙を流す
騎士団長は二人部屋でそれぞれ休み、ルーベルトは神官長と同室である。
騎士団員には女性が居るが、今は居ない
彼女達なら王女ペルセフォネの近くで守る事が出来ただろう
自分達は騎士団長にして長を務める
十歳の儀式は騎士団が務める、今回は神官長が行く事になり、団長で向かい、王女と宰相が現れた
その二人がオフィールの主人となられるよう、サポートしよう
大人達は思うのだ
誰かに操られてるのではないのかと、何かの為に動かされてるのではないのかと、しかし答えがなく、その疑問すら消えて行くのだ。
何故十歳で全てを決められる
神子見習いに選ばれてもコントロールを学び、神子の修業で諦める人が多く、帰ってしまう者も居る
毎月、子が来ても神子に慣れるのは、その中の一握りの酷な場所と知らず、子供は誇りのある儀式を心を浮かせて受ける
決められた運命
十歳の子には苦痛でしかない
しかしオフィールの民は幸せの中に満ち溢れて生きてる。
子供達も十歳の儀式に不安さえなく、期待に溢れて挑む
彼女を除いて
王女はマハトの覚醒がなかったとしても、儀式に不安を抱いていた
逆に宰相は興味も不安もなかった
ずっと王女を気にしていた。
キースは息を吐き出す
余計な事まで考えてしまった
ハワードが居るのに
しかしハワードは自分より副団長をこなしていた為、キースの負担を無言で減らす
ハワードは自室があるが、自室は妹の旦那、義弟に与えて今は団長専用の部屋で過ごす
その時、ノックが聞こえ、二人は見て、ハワードがドアを開ける
「兄さん…………」
妹のリアが戸惑い、部屋の前で立ち尽くし、兄のハワードを見る
「どうしたリア」
ハワードはリアの不安を煽らないように、キースを見せないようにドアと体でドアを塞ぎ、リアに聞く
キースも理解してイスに体を沈める
「お嬢様が食事をなさらないの」
ハワードは家族にペルセフォネとルーベルトはルフレにお連れするお嬢様と若君と伝えてる。
キースとハワードは内心溜め息を吐く
(やはり食べないか)
ここは騎士団の宿、彼等はハワードも含め十二の料理を熟知してる
「わかった、私が話し食事をさせるから」
ハワードは妹リアの頭を撫でキースを見て頷き、食事のワゴンを手にし、ペルセフォネの部屋の前に立ち、ノックする。
宿の息子として幼い頃からの習慣は抜けないものだと思う
室内からの返事はない
「失礼します王女様」
ハワードは静かにノブを手にし、ゆっくりと室内に入ると室内は暗く、ハワードは明かりを付け、見るとペルセフォネはソファの上で横たわっている
ハワードは知ってる
ペルセフォネが横たわってるソファはベッドよりも気持ち良い事をしかし親や妹の迷惑も避けたい
「王女様、お食事をお取りください」
ペルセフォネは身動き一つしない、しかし眠ってはない
彼女は起きてる
「明日も移動となりますから、お食事をお取りください」
ペルセフォネは顔を隠したまま否定する
ハワードはスピカの否定にどうしたものかと考える
「帰りたい」
ペルセフォネの言葉にハワードは頭を抱えたくなった
やはり帰りたいのかと
友が居なくとも十年と言う中で親と生き、小さな町で育った子供が願うのは家庭しかないのだろう。
しかし彼女をルイヒに帰すわけにはいかない。
王女として国の主人としてルフレにお連れしなければならない
「申し訳ないのですが、オフィールのルフレの為に、貴女様が必要なのです」
そう言うしか言えない
無能さの己に苛立つ
「私に何の力もない!使えない!王女なんて」
…………あるはずがない
彼女の叫びを自分に向ける
初めての声、言葉、ハワードは静かに黙って彼女を見守る
泣き叫ぶ彼女は怒鳴る
馬車の中で神官長が慰めていたら、宰相が支えていたら、こんな事は避けられたろうに、静かになれば、ペルセフォネは力なくソファに横たわる
疲れたのだろう、無理もない
朝、マハトの暴走が有り鎮めて体力も無い
その上食事も昼食のみ、体力が無い
だからこその食事なのだが、食べてくれない
ハワードのペルセフォネに近寄りベッドに運ぶ
ペルセフォネは少し暴れるがハワードはペルセフォネを落とす真似はしない。
ハワードはペルセフォネを見る。
このまま食べずに眠られたら、明日の移動に支障をもたらす
待て、今先王女は力が無いと言った。
王女のマハトはマハト石、しかし自分は王女の闇のマハトを感じてる
昨日や今朝のようにマハト酔いする程の力は無い
彼女に力を教えれば少しは信頼を得られるんじゃないだろうか?
ハワードは跪き、スピカと同等の視線になる
「ペルセフォネ様は力が無いと仰いましたが、力はマハトがあります。
しかし六つの力、マハトがぶつかり合い、上手く出せないのでしょう」
ハワードは静かに、言い聞かせるように伝える
「私や五人も王女様のマハトをルイヒに来た時から感じてます。
それに儀式のマハトの暴走も王女様のマハトです」
(儀式のマハトの暴走
しかしあれはマハト石のせい、自分の力ではない
それでも感じてるのだろうか?)
ペルセフォネは寝返りを打ち、ハワードを見る
「本当に?」
ハワードは闇のマハトを小さく出してペルセフォネが闇のマハトに包まれ、少し驚く
「大丈夫です、怯えずに、貴女のマハトが護ろうとしてるのです」
マハトがペルセフォネを護ろうと保護しようとしてるが、ペルセフォネ自身何も出来ない、ハワードは手を動かし闇のマハトを消す。
「マハト石が私のマハトじゃないの?」
「恐らく、儀式の時の暴走で、貴女様の中に負担無いくらいのマハトが入ったのでしょう、王のマハトは多いですから」
巨大なマハト、あれは王が扱うマハトの量
しかし巨大過ぎて全ては取り込めないし、体が堪えきれない
ハワードはペルセフォネを見る
「いきなりルフレに行く事に驚き、戸惑いも有り怖いのでしょう?
しかしペルセフォネ様は選ばれたのです。
そして私達もペルセフォネ様を護る騎士として選ばれたんです」
そう選ばれたのだ
去年から今回の儀式の直前で、騎士団長に選ばれた
ハワードも最年長だが、二十代で騎士団長になるのは珍しい
しかも六人全員
キースとハワードは、稀な光と闇の為、よしとしても、四人は数多いる中、その長に選ばれた
そして王女と宰相の存在
選ばれたと言わないなら、なんと言えば良い?
ペルセフォネはハワードの言葉に俯く
自分も彼等も選ばれた、自分だけでも無い、ルーベルトも
ハワードは戸惑う
(どうすれば、食事をしてくれるんだ)
ハワードは、ジュリウスやマリウスなら上手く出来ただろうなと考える
他者に接する向き不向きだ
ジュリウスは観察眼の為優れ、マリウスも相手を安心させる
自分ハワードは仕事以外、他者に関わる事事態、苦手だ
闇のマハトの好奇心で群がる他者に恐れたからだ。
それを理解し支えたのは家族と前任の闇の騎士団長だった。
ペルセフォネは小さく言う
「スギライトのペンダントがあれば食べる」
ペルセフォネの言葉にハワードは理解する
スギライトはルイヒの守護石、邪気の予防、心地良い癒し、で、ルイヒの守護花はローズマリー、追憶、思い出、から、ルイヒは邪気の予防、静かな力強さ、思い出の町とも言われてる
ペルセフォネは故郷の品を持つ事を望んでる
ハワードもウスィクのオブシディアンのナデシコを刻まれてる守護石を手放さずに持ってる
(ルイヒはスギライトとローズマリーだったはず)
「わかりました、すぐ用意しますので、少しでも食事をしてください」
そう言って部屋から出ると、出入り口で何か騒いでる
「何の騒ぎだ」
「義兄さん」
妹リアの夫がハワードを見て戸惑う
玄関を見れば何かを咥えてる大型犬がいた、しかも足が傷だらけだ
この騒ぎでキース、アベル、フランツ、マリウス、ジュリウス、ルーベルトが出て来る
ルーベルトが犬を見て驚く
「ハニエル?」
ハニエル?
ペルセフォネが出て来た
「ハニエル」
犬がペルセフォネを認知すると犬はペルセフォネに駆け寄り咥えていた箱をペルセフォネに押し付ける
ペルセフォネは箱を手にし、開けて見ると中にはクリーム色の宝石入れとカード
ツ書かれたカードが有り、中にローズマリーが刻まれたスギライトのペンダントが入っていた。
「ハニエル、ありがとう、持ってきてくれて」
ペルセフォネはハニエルに抱き着く
「クゥーン」
王女様愛犬ハニエル
天使の名前、そして王女の名はペルセフォネ、乙女座のモデルの女神の名前
恐らく王女様の名はアズルから与えられた名前だろう
産まれながらの王女
ペルセフォネはハニエルに寄り添い餌と水を与えるとハニエルはペルセフォネの体を押す
ハニエルはペルセフォネに部屋へ戻って欲しいと伝えようとしてる
ペルセフォネも理解しハニエルに言い付ける
「休んでね、ハニエル」
ペルセフォネは自分の部屋に戻り、食事をする
王女の愛犬、イングリッシュグレイトハウンド
大きく立派だが、古傷もある
ハワードはハニエルを見る
王女様はこの愛犬が必要なのだろう)
「キース、王女様はこの愛犬が必要のようだ。」
「そうだな」
キースもまた母を見る
(あのプレゼントが守護石のペンダントだと、知らなかったはずだ、しかし、そのプレゼントで王女は癒やされた)
リアは笑顔で
「お嬢様が食事をしてくれた」
と笑ってハワードに報せ、皆が安心する
ハニエルは餌と水を口にして満足したのか、玄関へ行こうとするがハワードが止めて寝かせる
「君も一緒だ」
ハニエルはハワードを見てゆっくり体を休める
朝、キースは一人着替えて外に出て、馬車と馬の様子を見る
二人の子供と神官長の安全の為の点検はキースの役目、怠る事は、許されない
無事にルフレへお連れしなければならない。
「出発は先なのに朝からご苦労だな、光の如く朝が早い」
キースはハワードを黙認する
「嫌味か?
昨夜はずっと王女様と愛犬、宰相様、神官長を見守っていたようだが」
キースの言葉にハワードは苦笑し自分の愛馬を触れる
昨夜、心を閉ざす彼女に、プレゼントを持ってきて愛犬のおかげで癒やされた少女
いつか、自分が王女様の支えになってやりたい
早くルフレへお連れしたい気持ちと、時間をかけて、お連れしたいと気持ちがぶつかり合う
朝となり、日差しでペルセフォネは寝覚め、もそもそと動く
少ししか眠ってないけど、眠くはない、ペルセフォネはハニエルを思い出し、着替えて部屋から出るとハニエルを見付けた。
ペルセフォネは安心しハニエルに触れて傷を心配する
この体でルイヒからウスィクまで来たのだ。
「ありがとうハニエル」
ペルセフォネはペンダントを握る
このペンダントの為に足が悪いのに持ってきてくれた
ペルセフォネは外を見て、ハニエルを連れて散歩に出かける。
キースとハワードはペルセフォネとハニエルを見ていた
キースはペルセフォネを密かに付いていくとハニエルの散歩で安心する
キースとハワードはペルセフォネとハニエルを見守り、戻るとハニエルの手入れをし部屋へ戻る
朝食や体の事を考え、出発時は十時となった。
時間となったが、ペルセフォネが中々馬車に乗ろうとしない。
理由は一つしかない、ハニエルの存在だ
それに気付いたハワードはペルセフォネに話す
「愛犬も一緒です、お乗りください」
ハワードの言葉にペルセフォネは驚き、ルーベルトも驚いて居て、ルーベルトも知らないようだ。
ペルセフォネとハニエルは乗り込む
ハワードは家族と話をする
「兄さん、もう行くの?」
兄様大好き、ブラコンの妹リア
「手紙を書くから、義弟、妹を泣かせたらわかってるだろうな?」
シスコン化ハワード光臨
これにハワードの父親は呆れ、母は笑ってる
「本当に妹バカね、だから結婚出来ないのよ」
余計なお世話だ、それに自分は結婚の意思はない
ハワードは馬に跨がり、ルフレへ向かう