「恋をすると人は変わるからねえ、今日会った時に垢抜けたっていうか、明るくなったように見えたんだ」
「恋なんてしてないよ」
「そんなこと言って。でも良かった」
「良かった?」
「うん、入学したての頃は全世界の人間敵って顔してたもん、でも今は可愛い顔してる。知ってる? 恋をすると変わるんじゃなくて、人が恋をする時は、変わりたい時なんだよ」
「……恋してないってば」
はいはい、と軽くあしらわれてしまった。もう一度鼻をかみながら自然と彼女の言葉が頭の中で繰り返される。それでももう一度否定した。恋をする相手なんて、いないし。
落ち着いた頃にちょうど晩御飯を作る時間になったからと二人で台所に立つ。お菓子のおかげでお腹は空いていないが、料理はこういう時の醍醐味なの、と念を押されてしまった。
「しかもカレーは定番食なんだよ!」
熱弁する彼女を横目に、食材を切って野菜を炒めて……と、やっていると「慣れてるね」と後ろから覗き込んできた。
「まあ。自分の分は自分で用意してるし」
「えー! そうなのっ? じゃあ得意料理は?」
「んー、定番だけど、肉じゃがかな」
「ああ……作ってもらえば良かった」
「カレーが定番食じゃないんかい」
呆れて変なツッコミになってしまった。また今度作ってね、と言われていつかの約束を取り付けられてしまう。あとは煮込むだけとなった時、お風呂を勧められた。お言葉に甘えてお風呂に入らせてもらう。