「そうだ、何か見たいのある? 晩御飯まで時間あるし、映画でも観よっか」
「あ、ああ、紬の見たいものでいいよ」
「ほんと? じゃあ、是非歩咲に観てもらいたいものがあって」
にこちゃんを私たちの間に座らせてリモコンを操作している紬に、聞きたいこととは別のことが口から出てきた。
「何で私に?」
「そりゃ私のおすすめだから! 共有したいのっ」
「ふうん?」
ずっとニコニコしている紬に、わざわざぬいぐるみのことを聞くのも野暮な気がしてすっかりタイミングを逃してしまう。
お菓子を摘んで、テレビ画面に視線を変えた。選ばれた映画は恋愛もの。大画面に映る俳優たちの演技に見惚れる紬を横目に、私も流し見しつつお菓子を頬張る。
内容は、余命僅かの主人公がその余生を恋に捧げる話。ありきたりな話だが、次第に見入ってしまう。
終わる頃には涙が流れてしまっていた。エンドロールを迎えると「面白かったね」とようやく顔を合わせた紬が、驚きの表情に変わる。
「ボロ泣きじゃん! ちょ、ちょっと待って、ティッシュ! はいっ」
手渡されたティッシュで涙を拭いて鼻をかむ。私だって予想外に感動してしまってつい感想を述べる。
「やっぱり死んじゃうなんて……。結局助かると思ってたのに。やっと恋が叶ったのに……」
「そこが肝なんだよねえ、この映画の。でもまさか歩咲がそこまで感動するなんて思わなかった。あ、さては、好きな人が出来たな?」
つんつんと頬を小突かれ、つい睨みつける。でもまだ涙目であることは一目瞭然で、ふふ、と紬は笑った。
「あ、ああ、紬の見たいものでいいよ」
「ほんと? じゃあ、是非歩咲に観てもらいたいものがあって」
にこちゃんを私たちの間に座らせてリモコンを操作している紬に、聞きたいこととは別のことが口から出てきた。
「何で私に?」
「そりゃ私のおすすめだから! 共有したいのっ」
「ふうん?」
ずっとニコニコしている紬に、わざわざぬいぐるみのことを聞くのも野暮な気がしてすっかりタイミングを逃してしまう。
お菓子を摘んで、テレビ画面に視線を変えた。選ばれた映画は恋愛もの。大画面に映る俳優たちの演技に見惚れる紬を横目に、私も流し見しつつお菓子を頬張る。
内容は、余命僅かの主人公がその余生を恋に捧げる話。ありきたりな話だが、次第に見入ってしまう。
終わる頃には涙が流れてしまっていた。エンドロールを迎えると「面白かったね」とようやく顔を合わせた紬が、驚きの表情に変わる。
「ボロ泣きじゃん! ちょ、ちょっと待って、ティッシュ! はいっ」
手渡されたティッシュで涙を拭いて鼻をかむ。私だって予想外に感動してしまってつい感想を述べる。
「やっぱり死んじゃうなんて……。結局助かると思ってたのに。やっと恋が叶ったのに……」
「そこが肝なんだよねえ、この映画の。でもまさか歩咲がそこまで感動するなんて思わなかった。あ、さては、好きな人が出来たな?」
つんつんと頬を小突かれ、つい睨みつける。でもまだ涙目であることは一目瞭然で、ふふ、と紬は笑った。