夏休みも終わりを迎える頃に、紬とお泊まり会を開催することになった。彼女の家に出向くと、玄関先で、パアン、と大きな音が鳴らされる。視界には飛んでくる色とりどりの紙切れ……と、クラッカーを持った紬が立っていた。
「いらっしゃいませー!」
「……そこまでする?」
 言いたいことは山ほどあるのに、呆れてそれだけのことしか言えない私を他所に、さあ入って入って、とスリッパを出してきた。促されるままスリッパに足を滑らせてリビングへ向かう。
 思っていたよりもずっと綺麗な家。片付いていて、生活感があまり出ていない。埃もそれほどないかも。通されたリビングには台所があるがそこも全然綺麗に整理整頓されている。
「綺麗な家だね」
「ふふ、でしょ? 歩咲が来るから綺麗にしたんだよ」
「一人で? そりゃ凄いね。でもそれだけじゃなくて、なんていうか、新築みたい」
「それは言い過ぎ! 仕事で基本的に親いないから、私だけなの。一人じゃ汚しようもないでしょ」
 さらりと言ってのけたが、どきりとした。そういえば、そうだった。彼女の家は両親共働きで家に帰ってくるのも夜遅い。早い日もあるらしいが、ほとんど残業漬けの日々を過ごしているそう。今のご時世、働き方改革なんて謳われているがまだ浸透していないのかもしれない。
「あ、心配しないでね。両親とは仲良いの」
 ソファーを指され、座って待っているとテーブルにお菓子の入った皿とジュースが出される。スナックやチョコがコーティングされたお菓子が色々入っている。横に腰かけた彼女に、そうなの、と問いかけてみた。