そういえば花乃子も私たちのことをそんな風に言ってたっけ。思わず望月くんを見ると、望月くんも私を見ていた。
「な、なに」
「いや、星村、中学の時はもっと友達多かったって聞いたから」
「花乃子、そんなこと話したんだ」
「その子達とは連絡取ってないの?」
「うん、もういいかなって」
「……前にも、友達はもういいって言ってただろ? 中学時代、何かあったのかなって」
「何もないよ。友達と喧嘩しただけ。それで何か馬鹿らしくなって、人の顔色窺うのもしんどいし、色々考えたら疲れちゃって」
 そっか、と呟いて望月くんは私から顔を逸らすと体育座りした膝に頬を乗せて、再度顔を覗き込んできた。
「なのに、さ。無理やりタロちん紹介して、ごめんな?」
「ああ……。いや、いいよ」
「俺、星村にもっと友達が出来たら、それこそ彼氏が出来たらいいなって思ったんだ。でもそんなことしなくても、星村は自分で選んでるわけだし、余計なことしたなって」
「……まあ、でも、結果的に、花乃子に春が来たわけだし」
 私の返答に、春って、と笑い声が漏れる。私もつい笑ってしまった。花火から逸れた顔に陰りが出来て、まるで秘密の話をしているよう。くすくすと笑うその顔を大事にしたくなる。この場所以上に。
 だから、望月くんの言葉を思い出しながら花火に視線を変えた。
 彼氏が出来たらいいな、か。心の中で反芻してみる。何度も何度も反芻した。やがてその言葉が、戒めの言葉になるまで。