「わかった! 話すから、絶対誰にも言わないでね?」
 手を前に差し出し、一旦離れて貰うと、満足気に頷いてくれた。
 望月くんとは夢で会っていること、何でこうなったかまでは分からないが、夢の事象まで歩きながら話した。
 黙って花乃子は聞いていたが話し終えると「睡眠に関する病気を知ってる?」と突然言い始めた。
「い、いや、知らない。え、病気だって言いたいの?」
 いきなりのことに戸惑いながら、わざと笑みを浮かべて返すが、花乃子は真面目な顔をしていた。
「そこまでは言わないけど夢のメカニズムはまだ完全に解明されていないの。それでも今分かっていることは直近の記憶と結びついたものや過去のことがストーリーとして現れること。でも二人はそうじゃない、記憶じゃなく現在進行形で、夢の中で生きて会話をしている……それって凄く異常なことよ」
「何が言いたいの」
 異常、という言葉に過敏に反応してしまう。思わず睨んでしまったが、それでも花乃子は続けた。
「人の脳は私たちが思ってるよりもずっと複雑なの。ないものをあるように考えられるし、強いストレスを感じたらその元凶をなかったことにも出来る。脳の中では魔法が起きてるの。そして頭の中のことが影響する夢もまた魔法の世界なの。……気を付けて、歩咲。あまり夢の中のことを大事に思わない方がいいわ。怖い想像をしちゃった」
 困ったように肩を竦めて笑う花乃子を見て、私も首を傾げた。煮え切らない、しかも訳が分からない返事に怒りは萎み、言葉の意味を考えてしまう。