花火が終わると、私たちは途中まで一緒に帰ることになった。屋詰さんと花乃子はすっかり仲良くなったらしく、連絡先交換をして彼と駅で別れた。
 他校の人と連絡先交換って何だか大人の世界だ。彼女と並んで歩く夜道、私はどきどきしながら聞いてみた。
「もしかして、始まった? 恋」
「……始まってない」
 ちょいちょいと肘で小突くとそっぽを向かれる。照れているのだろう、私は大袈裟に、そっかあ、と口にした。
「じゃあ私、屋詰さん狙っちゃおっかな?」
「そんな気ないくせに」
「あ、バレた? ふふ、ごめんごめん。何だか珍しくて」
「珍しい?」
「花乃子が人に興味持つなんて」
「酷いこと言うのね。そんなことより、歩咲こそ望月さんとの方が仲良いのね」
「あ、ま、まあ?」
 そういえば花乃子には屋詰さんっていう友達も来るからって説明をしていた。言葉のあやでそう言ってしまったが、望月くんとのことは特に説明していなかった。
 ところが来てみたら、彼との方が親しいのだから不思議に思えただろう。いや不思議なことじゃない、かもしれないが、時すでに遅し。しどろもどろに返してしまったから、怪訝な目を向けられた。
「友達?」
「そう……だね」
「本当に? 何だか怪しい。二人とも、ただの友達には見えなかった」
「そう言われても。友達……じゃないのかも? 元々接点もないから」
「へえ、じゃあどうやって知り合ったの?」
 喋れば喋るほど墓穴を掘っている気がする。つい後ずさってしまうとじりじりと詰め寄られ、ついに電柱に背中がついてしまい、逃げ場を失った。