「ごめんごめん、彼女からだった。そこでお願いなんだけど、彼女も一緒に花火見ていい? バイト終わったみたいで合流したいって」
「私は構わないです」
 花乃子が淡々と返す。こういう時、さすがだが、私は躊躇った。ここに? 望月くんの恋人が?
 今日は、元々私と屋詰さんと花乃子だけの予定のはず。そこに望月くんが入ることになったのは偶然だと言ってもいい。意図せずだ。
 それなのにここに彼女が来たら、彼の青春に、私が入り込むことになる。それは駄目だ。そこから先は、私が入っちゃいけない場所。
「わ、私は……」
「二人で見ろよ」
 私のか細い声が、屋詰さんの声と被さってかき消された。つい彼に視線を向けると、つまらなさそうな顔をしていた。
「イチャイチャを目の前で見せられるのもだるいしな。花乃子ちゃんも、歩咲ちゃんも、いいだろ? 元々いっせはいない体だし」
「あ、省こうとしてる。俺がいて嬉しかったくせにー」
「それとこれとは話が別だろ、ほら行け行け」
 しっしっ、と手で払う仕草に対してぶうぶうと怒っている二人の様子を見て、内心、私は安心してしまった。良かった。彼女がここに来なくて。私から、拒否する羽目にならなくて。
 文句を言って散々口を尖らせた後、彼は私たちの前で両手を合わせた。
「星村、花乃子ちゃん、ごめんな! また今度埋め合わせするから」
「私は結構です」