ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を眺めていると花乃子が横に並んできた。心なしか疲れた顔をしているが、玉子せんべいを手渡される。
「これ、歩咲の分。買っておいた」
「やった、ありがとう。これ好きなんだよね」
「だから買ったの」
 もう一度お礼を言って一口パリッと音を立てて口に含んだ。美味しい。
 薄いえびせんべいの上に目玉焼きとマヨネーズがかかったこれが目当てで毎年お祭りに来ているところはある。花乃子はそれを知っているから売っている屋台を私より先に見つけてくれる。
 もう一口食べると、屋詰さんが花乃子にたこ焼きを渡し、望月くんも受け取ろうとするがその手を止め、おっとごめん、とポケットからスマートフォンを取りだしてその場を離れていった。
「彼女からだった」
 わざわざ屋詰さんが私に言ってくる。ああそうですか、と返すのも馬鹿らしくて無視した。
「もうすぐ花火が始まるね」
 花乃子が言った言葉に時計を確認する。時間が経つのは早い。
「もうそんな時間なんだね、それまでに望月くん戻ってきたらいいけど」
「そういえば望月さんと屋台見て回った時、歩咲のこと話してたよ」
「ええ? 悪口じゃないよね?」
「はっきりしててかっこいいって。案外ナイーブなんですよーって言っておいた」
「変なこと言わないでよ」
 幼なじみというのは厄介なものだ。私の何から何まで知っている。それこそ、望月くんと出会う前の過去も……。変なこと言ってないだろうか。
 どきどきして花乃子を見ると、彼女は真っ直ぐ前を見ていた。屋詰さんも「来た」と短く言い、私も視線を向けると望月くんが戻ってきていた。