「望月くんが私を裏切らない限り、私は彼を裏切りません」
「その保証は?」
「……例えば私が彼を好きになったとしても、それを伝えることはない。……友達か、友達じゃないかと聞かれたら、説明も出来ない変な関係ですが、私は望月くんと夢の中で過ごす時間が好きなんです。これでは答えになってないと分かってます。ですが恋が別れに繋がるのなら、その心配はない。伝えないんですから」
 きっぱりと言い切ったからか、僅かに鼓動が速い。顔に熱が集まるのは、この熱気だけのせいじゃないだろう。汗が首元を伝う。
 屋詰さんは口を真一文字に結び、私を観察するように見ていた。やがて二人の間に喧騒が入ってくる。集中していた糸が切れ、彼は息を吐き出した。
「分かった。無粋なことを言ったな、悪かった。戻ろう」
 背中を向け、歩き出す。こっそりと安堵のため息を吐いて、私はその後を追った。
 待ち合わせ場所へ行くと、望月くんと花乃子は既に来ていた。やんちゃ者に絡まれている女子高生……そんな図を二人は作り上げている。呆れながら二人に近寄ると「お、遅かったじゃん」と軽い調子で彼は屋詰さんの肩に腕を回した。
「さてはこの隙に口説いてたなあ?」
「まあそんなとこ。歩咲ちゃん可愛いから」
 よく言う。冷めた目を屋詰さんに送るが素知らぬ顔をしている。
「星村気を付けろよ、こう見えてタロちんは手が早いから」
「お前に言われたくねえわ! あっちこっちでたぶらかしやがって!」
「みんなが俺を放っておかねえのん、タロちんだってそうなくせに」
「うぜえっ」