「え……じゃあ、たこ焼きですかね」
「一緒に買いに行こうか?」
「え……いやあ」
 ニコニコと笑顔を浮かべてくれているが、どう断ろうかと悩んでいると横から小突かれる。「行きなよ」と念押しされた。
「じゃ、俺たちは俺たちで買いに行っちゃう? 花乃子ちゃん、行こうぜ」
 軽い調子で望月くんが花乃子を誘うも、はい、と淡々と返されていた。温度差が少し面白く感じたが、彼のウインクが送られてきて興醒めしてしまった。
 後で待ち合わせをしようと約束して別れたがすぐに後悔することになる。喧騒の中、屋詰さんと私の間だけ静寂が流れ続けていた。仲良くする気はない、そう言いたげな横顔にだんだん苛立ってくる。
「話があるって言ったのはそっちでしょ」
 口火を切ったのは私だった。視線が流れてきて、目が合う。可愛い顔をしているのに、身構えた。この目を私は知っている。敵意の目だ。
「単刀直入に言う。いっせを好きなら、やめろ」
 たこ焼き屋の前に辿り着いて、屋詰さんが四パック分注文する。待ち時間少しあるよ、と屋台のおじさんが言うと、にこやかに、大丈夫です、と返して脇に寄った。その背中を睨みつけ、習って彼の横に寄ってからもその姿勢を崩さなかった。
「好きじゃないです」
「どうだか。あんたみたいな人をよく知ってる。友達面して近付いていっせをたぶらかす。どうせ傷付けるくせに……」
「その人がそうだっただけで私はそんなつもりありません。一緒にしないでください」
「信じられない」
「そう言われても……。大体、屋詰さんに望月くんの交友関係を縛る権利はないはずです。なのに、どうして」
 彼は視線を地面に落とすと、深く息を吐いた。それから意を決して顔を上げる。