望月くんたちと合流して自己紹介もそこそこにまずは屋台を見て回ることになった。すっかり日が暮れたこともあって人も多い。色んな匂いが混ざりあって、湿気というか、もはや熱気がまとわりつき、じわじわと汗が流れていく。
それでも歩きやすく感じられるのは、望月くんと屋詰さんが前を歩いてくれているからだろう。
望月くんの背中を眺める。屋詰さんと冗談を言い合っている横顔がずっと笑っている。Tシャツにジーパンと普通の装いだが、心做しかいつもよりかっこよく見えた。新鮮さが増すと顔だけじゃなく身体の端々まで良く見えるのだから不思議だ。
「どっちが好きなの?」
横から発せられた言葉に思わずどきりとしてしまう。花乃子がニヤニヤと下世話な笑みを浮かべていた。
「どっちも好きじゃないよ。屋詰さんなんかほとんど知らないし」
言ってから、でも、と思い直す。望月くんのことも、説明できることは何もない。名前とクラスくらいしか知らないのだから、屋詰さんと変わりないことに気付いた。
「じゃあ望月さん?」
「いやあ、望月くんは……」
友達なのだろうか。よく分からなくて目を逸らすと、屋詰さんと目が合ってしまう。逸らすことが出来なかった。逸らしてしまったら、駄目なような気がした。説明のできない不安が漂う。話を聞いていたのだろうか……。
屋詰さんはそのまま振り向くと「歩咲ちゃん」と呼んできた。
「何か食べたいものはない?」
それでも歩きやすく感じられるのは、望月くんと屋詰さんが前を歩いてくれているからだろう。
望月くんの背中を眺める。屋詰さんと冗談を言い合っている横顔がずっと笑っている。Tシャツにジーパンと普通の装いだが、心做しかいつもよりかっこよく見えた。新鮮さが増すと顔だけじゃなく身体の端々まで良く見えるのだから不思議だ。
「どっちが好きなの?」
横から発せられた言葉に思わずどきりとしてしまう。花乃子がニヤニヤと下世話な笑みを浮かべていた。
「どっちも好きじゃないよ。屋詰さんなんかほとんど知らないし」
言ってから、でも、と思い直す。望月くんのことも、説明できることは何もない。名前とクラスくらいしか知らないのだから、屋詰さんと変わりないことに気付いた。
「じゃあ望月さん?」
「いやあ、望月くんは……」
友達なのだろうか。よく分からなくて目を逸らすと、屋詰さんと目が合ってしまう。逸らすことが出来なかった。逸らしてしまったら、駄目なような気がした。説明のできない不安が漂う。話を聞いていたのだろうか……。
屋詰さんはそのまま振り向くと「歩咲ちゃん」と呼んできた。
「何か食べたいものはない?」