「ごめんね、いつも二人なのに」
謝ってみたがいつも通り涼し気な顔で「別にいいよ」と返される。この顔を驚きに変えるには、百人誘うしかないのかも、と馬鹿なことを考えた。
「それよりちょっと意外」
何がだろう。首を傾げると頭から汗が流れてくる。夕方と言ってもやはりまだまだ暑い。
「歩咲、入学したての頃は本当に疲れた顔してたから。……ううん、その前から、ずっと。だから、友達を作る気ないって言われた時はそりゃそうだよねって納得してた」
何にも関心のない、そんな花乃子に案外見られていたことを知る。私の方こそ驚いてしまって何も言えないでいると、私を一瞥して、続けられた。
「だから夏祭りに誘うほどの友達が出来たんだって思って」
「誘うっていうか、誘われたというか、拒否するタイミングも逃したし」
「でも嫌だったら断るでしょ?」
口元に笑みを携えながら問われ、まあ、と返すしかなかった。その通りだったから。
屋詰太郎が言った、どうせ話もあるから、という言葉も私の中で引っかかっていた。
告白のようなそんな浮いた話じゃない。低い声のトーンがそれを裏付けていた。何かもっと別の、それでいて重要なことのように思えた。断らなかったのは、それが理由かもしれない。
ミーンミーンと蝉が疲れたように鳴く。夕焼けが遠くの空まで広がっていて、もうすぐ日が落ちる。
「歩咲の友達がどんな人なのか、楽しみ」
楽しみ、と言って微笑むその顔に夕日の色が乗る。赤く染まったその顔が、毎年見ていた顔とは違う気がして、何だかそわそわしてしまった。
謝ってみたがいつも通り涼し気な顔で「別にいいよ」と返される。この顔を驚きに変えるには、百人誘うしかないのかも、と馬鹿なことを考えた。
「それよりちょっと意外」
何がだろう。首を傾げると頭から汗が流れてくる。夕方と言ってもやはりまだまだ暑い。
「歩咲、入学したての頃は本当に疲れた顔してたから。……ううん、その前から、ずっと。だから、友達を作る気ないって言われた時はそりゃそうだよねって納得してた」
何にも関心のない、そんな花乃子に案外見られていたことを知る。私の方こそ驚いてしまって何も言えないでいると、私を一瞥して、続けられた。
「だから夏祭りに誘うほどの友達が出来たんだって思って」
「誘うっていうか、誘われたというか、拒否するタイミングも逃したし」
「でも嫌だったら断るでしょ?」
口元に笑みを携えながら問われ、まあ、と返すしかなかった。その通りだったから。
屋詰太郎が言った、どうせ話もあるから、という言葉も私の中で引っかかっていた。
告白のようなそんな浮いた話じゃない。低い声のトーンがそれを裏付けていた。何かもっと別の、それでいて重要なことのように思えた。断らなかったのは、それが理由かもしれない。
ミーンミーンと蝉が疲れたように鳴く。夕焼けが遠くの空まで広がっていて、もうすぐ日が落ちる。
「歩咲の友達がどんな人なのか、楽しみ」
楽しみ、と言って微笑むその顔に夕日の色が乗る。赤く染まったその顔が、毎年見ていた顔とは違う気がして、何だかそわそわしてしまった。