「え、じゃあ俺は?」
 自分を指さしながら言ってきて、どういう意味の、俺は、なのか分からずに首を傾げると、だから、と続けた。
「デートじゃないんならその誰かは俺で良くない? 気心知れてるわけだし」
 ああそういう。納得しかけたが、彼女の存在を思い出す。
「恋人は? 恋人と行けばいいじゃん」
「それがバイト入れちゃってるみたいでさ。まあ、あいつが行きたがってたテーマパーク一緒に行くからいいんだけど」
「そうなんだ。そのために望月くんもバイトを?」
「そう。それに夏は何かと物入りだし。どうせなら奢ってかっこつけたいだろ」
 照れ臭そうに笑う彼を見て、やっぱり生きている世界が違うと思った。彼と私の夏休みじゃ密度が違う。アクティブなのに対して私は……。
「で、俺行っていい?」
 暗くなりかけていたが、見るからにわくわくと目を輝かせている顔を見てその気持ちも失せ、そっぽを向いた。
「屋詰さんに聞きなよ。私はいいし、私の幼なじみもいいってきっと言うし。あと、来るなら彼女にもちゃんと女の子がいること言っておいてね」
 浮気の心配をしていた彼の幼なじみが何と言うか。分かってるって、と軽く返事をしてくる望月くんにも呆れてしまった。
 驚いたことに屋詰さんは了承したようで、私たち四人で行くことになった。夏祭りの日、支度を終えて家を出ようとする私に「お姉ちゃん」と背中から声をかけられる。蒼菜だった。