「この子がいっせの紹介したい子?」
 いっせと呼ばれているらしい。望月くんは頷いた後、私の前の席に座った。まんまる茶髪くんもその横に腰かける。
「お前、下の子もたぶらかして……。しかもこんな真面目そうな子を! 彼女に言うしかねえ!」
 茶髪くんはパシーンといい音を鳴らして望月くんを叩いた。突然のことに驚いていると「違うって、話を聞け!」と制する。私も手を前に突き出した。
「私からも話をさせてください。この人にたぶらかされるなんてありえない」
「酷い! こんなイケメンに何てことをっ」
「それ以上に残念なポイントがいっぱい」
 わあわあと騒ぐ望月くんをなだめていると、茶髪くんが吹き出した。それを合図に当の本人も笑い出す。呆れて私も笑みを浮かべていた。
 落ち着いた後にお互い自己紹介をした。彼の名前はまんまる茶髪くん改め、屋詰太郎さん。タロちんって呼んでるよ、と望月くんが補足してくれたが、呼ぶことはないだろう。
 その後に私たちの関係を話した。屋詰さんは眉間に皺を寄せながら話を聞いてくれたがにわかには信じ難い話らしく、聞き終えたあとも、うーんと唸って机に突っ伏した。
「浮気じゃないんだな?」
「浮気じゃない」
 そう疑われることは覚悟していたが、即座に否定する。偶然にも声が重なってしまい、屋詰さんも目を細めたが、自分でも怪しさが増したと気付いてしまった。